上写真=アウェーの愛媛戦に備えて現地で練習。星雄次のゴールはあるか(写真提供◎アルビレックス新潟)
「いま思えば右足に置いた方が…」
4月21日のJ2第9節栃木SC戦。アルビレックス新潟が今季初めての黒星を喫するかもしれない、という嫌な流れを変えた要因の一つは、77分の交代策にあった。
矢村健が先制しながら逆転されて1-2となったまま時計の針が進む中、アルベルト監督はボランチの一角に入る島田譲に代えて攻撃的なMFの星雄次を投入すると、高宇洋をアンカーに置き、1トップの谷口海斗の後ろに高木善朗と本間至恩を並べ、星は左、矢村健が右のウイングとなるフォームチェンジを施した。これでぐぐっと押し込むパワーを手に入れた。
星にとっては3試合ぶりの出場。そのわずか1分後にいきなりゴールに迫ったシーンがあった。
最終ラインの千葉和彦から、ハイラインの裏に優しいロングパスが飛んでくる。星は左から抜け出して受けると、ていねいにトラップしてGKの動きを見ながら左足でフィニッシュ。決まった、と思ったが、渾身のセーブにあってしまった。こぼれ球を谷口がボレーで狙うがこれもバーの上へ。
「トラップはうまくいったんですけど、時間はあったので、いま思えば右足に置いた方がシュートの選択肢が増えたと思います。左で打ったのはいいプレーではなかったです」
その反省は次の愛媛FC戦以降に生きるはずだが、星の投入をきっかけにしてチームがさらに前へとボールを進める勇気を取り戻したのは間違いない。最終的に同点ゴールにつながったCKは、こうして攻撃への圧力を増したからこそ奪ったものと言っていいだろう。
「本格的に蹴り始めたのは今年から」
その同点ゴールは90+2分、右CKから千葉がヘッドでたたき込んだものだったが、見事なキックでアシストしたのは星だった。
「あそこは狙いとしてはあるので、あとはキックの質ですね。プレースキックは大事だから、いいところにいったとは思います」
右足できれいに巻いてカーブをかけ、千葉の頭に吸い込まれていくようなきれいな軌道を描いた。「本格的に蹴り始めたのは今年から」とは思えない精度の高さで、「キャンプ中から蹴っていたので感触は悪くなかったけど、これからも蹴る機会があれば自信を持って蹴りたい」と手応えを得た。そのことも、2-2に追いついて無敗記録を伸ばすドローとともに収穫になった。プレースキックは右足は高木、左足は島田が主に務めるが、これで右に新しいオプションが加わったのは心強い。
「自分は得点を決められるシーンもあったし、アシストは良かったけれど、ほかにもっとやれたんじゃないかと思います」と反省はある。だが、「スタメン組以外でもしっかり取り組んでいますし、準備はできています。誰が出ても同じようなチーム力を発揮できるのではないかと思います」と、交代出場の多い自分自身の活躍で、総合力の高まりを証明してみせた。
今季は先発出場は1試合のみだが、そのレノファ山口FC戦では移籍後初得点を決めているし、他の試合では短いプレー時間でもしっかり存在感を示している。それがチームの厚みにつながっている。新潟が強いわけだ。