1勝1分け1敗。V・ファーレン長崎の3試合の結果だ。昇格の有力候補という前評判からすれば、こんなものではないだろう。吉田孝行監督も攻撃には納得していて、その中心の一人、ルアンからは「献身的自由」を引き出した。

上写真=長崎の攻撃の要になるのがルアン。神出鬼没だ(写真◎J.LEAGUE)

「自由なようですけど、やるべきことをやってくれている」

 V・ファーレン長崎の次の相手はFC琉球。3連勝と勢いに乗っているチームだ。長崎にとってはアウェーゲーム。こちらは1勝1分け1敗と五分の星だから、直接彼らに土をつけて勢いを削いでおきたいところだ。ただ、吉田孝行監督は「どの試合も大事で、42分の1の位置づけは変わりません。どの試合も勝つつもりです」と平常心を強調する。

 開幕戦でツエーゲン金沢を2-1で下したあと、アルビレックス新潟に0-1、愛媛FCに1-1という流れだが、前節の愛媛戦では「自分が理想とするサッカーはできたと思います。数多くチャンスを作れましたし、点が入る、入らないというところで結果は左右されますが、やっているサッカーにブレはない」と自信を隠さない。

 チャンスメークで際立つのは、やはりルアンの存在ではないだろうか。神出鬼没で、抜群のテクニックを駆使しながら、相手が困る場所を次々と突いていく。敵に回したら最も嫌らしいタイプ。

「ある程度の自由を与えているのは確かです。なぜかというと、攻撃で人と違うプレーができるのが武器で、それを消すのはチームにマイナスになると思うからです」

 吉田監督はそう確信している。だから、いつどこに出てくるか分からないのだ。ありきたりな「ポジション」にとらわれない。

「僕はボールを回すためにポジショニングにはうるさいのですが、ルアンは自由にやってしまう部分もあるんですけど、そのバランスですよね、自由にやるところと必ず守らなければならないところの。彼に強く言っているのは、単にゲームをつくる10番で終わってはいけない、ということです。背後に走る、アタッキングサードで違いを見せる、それを言っていて実行できています。開幕戦のアシストも裏に抜けて出ましたし、ドリブルでアタッキングサードに進入してくれている。だから、そういう部分で自由なようですけど、やるべきことをやってくれているのかなと思います」

 相手からすれば、だからこそやっかいなのだ。単に自由気ままにプレーする無責任な選手であれば放っておけばいい。しかし、いまのルアンは「献身的自由」をまとったファンタジスタなのだ。

「実は彼は去年から、チームのためにプレーすると言っていた選手なんです。守備が難しくなると見られていた部分もあると思いますけど、自分は逆の発想で、彼の攻撃が相手の守備を混乱させるということ。チームとしての守備の約束事はしっかりと守ってくれています。私のコミュニケーションがいいというより、彼の姿勢がいいのだと思います」

 そのルアンを琉球がどう封じ込めるのか。今節のJ2の大きな見どころになりそうだ。


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