上写真=開幕戦で先発出場を飾った荒木翔。スタートは右WB、途中から左WBでプレーした(写真◎小山真司)
練習していた形からゴールをお膳立て
甲府にしてみれば、勝てる試合だった。前半終了間際に先制し、後半途中に追いつかれたが、アディショナルタイムにPKのチャンスを得た。決めれば勝利というシチュエーションで、結果は失敗に終わる。勝ち点「2」を失った格好だ。
ただ、勝ち切ることはできなかったが、狙いは実った。先制点の場面。早いサイドチェンジと速いクロスで、千葉の堅牢を破った。中村亮太朗のゴールをアシストしたウイングバックの荒木が言う。
「有田(光希)選手と三平(和司)選手がディフェンスラインを引っ張ってくれて、中が空きました。あの形は去年からやっていて、ボールは少し浮きましたが、亮太朗がうまく決めてくれた。一番最初に見つけた選手で、相手のボランチが付いてこなかったので、早くボールを渡すことを考えていました」
まさに狙い通り。そして練習通り。これまでの積み重ねが、ゴールにつながった。伊藤彰監督も「トレーニングでクロスにしっかり入っていくことをやっていたので、ゴール前に4人入っていたのはよかった。その後もチャンスがありましたけど、ゴール前で怖さを出すためにはクロスの回数や質が大事になる」と評価した。
ただ、結果につながったのは、この場面のみだった。両ウイングバックはパスを受けるや素早い球離れで裏へを狙ったり、相手の虚をつくクロスでチャンスメークを試みた。だが、次第に守備のリズムが出てきた千葉を崩せず、追加点を奪うことができなかった。
「けっこう落ち着かないゲーム展開だったので、サイドのところや後ろで時間をつくってボールを動かせれば、よかった。もう少しそういう時間が増えれば自分たちの展開になるし、僕のところでも時間をつくれたら」
荒木もやや単調になった攻撃を反省した。とはいえ、シーズンのスタートでしっかり数字を残せたことは大きい。今季から副将となり、責任感がさらに増したと自覚する荒木は言った。
「去年よりはアシスト数だったり、ゴールというところは求められると思うので、いいスタートが切れたかなと思います」
開幕戦は勝ち切れなかったものの、手応えは得た。昨季は1得点5アシスト。今季は2020年を超える結果を求めて、荒木は2021年を駆ける。