上写真=心身ともに充実した様子を見せる李忠成。ゴール量産を目指す(写真提供◎京都サンガF.C.)
「気取ったサッカーをしてしまいました」
「正直言って、去年のことは1秒も話したくないと思います。去年は去年でリセットしているし、比較する次元の話ではないので」
李忠成の目に、ぐっと力が入った。京都サンガF.C.に移籍してきた2020年は5試合、237分のみの出場だった。全42節3780分のうち、わずか6%強の出場時間に終わった1年に、潔く別れを告げた。だから、2021年の李忠成は強い。
チョウ・キジェ新監督のスタイルが心地良いようだ。
「すごく合ってますね。歳は関係ないですけど、でもこの年齢でチョウさんのこのサッカーに出会えたことは僕にはメリットしかないです。一から鍛え直されて、いま20歳の気持ちでサッカーやってます。とても楽しみで、毎日どうやったらうまくなるか、足が速くなるか、体力が上がるかしか考えていません」
サッカーに夢中な、20歳のような35歳。そのチョウ監督のサッカーの魅力を独特な言葉で表現する。
「個人個人というよりもチームとしての一体感だったり、攻守における連係の部分がキジェさんのサッカーの肝だと思います。チームというくくりでは大きくなるけれど、2人や3人の関係、ミクロというか小さい規模でのユニットでのコンビネーションや意思疎通、信頼感を練習中に築けていければ、自ずと個がユニットになって、ユニットがチームになって、チーム勝っていって結果がついてくると思うので、(開幕までの)この2週間はその積み重ねだと思いますね」
小さな単位からていねいに磨き上げて、大きくしていく。崇高なものづくりに通じるようなチョウ・キジェ流にあって、その基本を怠ることは、新しい京都フットボールの流儀にもとる。
2月14日にはサンガスタジアム by KYOCERA でガイナーレ鳥取とテストマッチを行って、2-1で勝利を収めた。しかし、先制点を許すなど、生々しい反省点から目を背けようとはしない。
「チームの組織で戦うというよりも、個人の差を見せつけて勝たなければいけないゲームでした。正直、キャンプ中の練習試合や練習の手応えが僕自身にも選手みんなにもあって、その手応えがあった分だけいい試合をしてやろうという気取ったサッカーをしてしまいました。ガチンコの殴り合い、刺し違えるような泥臭い殴り合いをしないといけないと思うし、相手の方が泥臭くやっていました」
カッコつけるにはまだまだ早い。百戦錬磨の経験がそう言わせる。自分自身にも矢印を向けて、開幕へ、そして長いシーズンへと高めていく。
「個人的には(ゴール前で)しっかり入るところは入っています。あとはボールが来るか来ないか、ですね。コンディションはいいので、結果はあとからついてくると思います」
さあ、プロ18年目のシーズンへ。先頭に立って京都を引っ張る準備はできている。
「J1でもそうかもしれませんが、特にJ2では流れに乗ったチームが昇格に近づくと思います。開幕から連勝できればいい波に乗れるから、いかにその波をつくれるかですね。去年の徳島も福岡も連勝で波をつくっていました。今度は僕たちがつくれるように、僕のゴールでそんなシチュエーションをつくりたい」
自慢の左足で突き刺して、ビッグウェーブを起こしてみせる。