2月5日から10日間の静岡キャンプを14日に終える東京ヴェルディ。佐藤優平はまた新たなステップを踏みしめようとしている。毎年、進化を止めない永井秀樹監督の頭の中に追いつくために。その楽しさと難しさを、抜群に面白い言葉で表現した。

上写真=佐藤優平は東京ヴェルディで4シーズン目。永井秀樹監督のサッカーが面白くて仕方がないようだ(写真提供◎東京ヴェルディ)

80パーセントのゲーム支配

「ヴェルディのサッカーは、面白い」

 2021年のシーズンを前に、MF佐藤優平は改めてそう噛みしめるのだった。東京ヴェルディの一員となって4年目。永井秀樹監督の指揮の下では1年半、プレーしてきた。2020年の41試合出場7ゴールはいずれもキャリアハイ、成長の証だ。

「監督が永井さんになって1年半ぐらいで、最初に言っていた基本ベースは変わりませんが、監督が求めることは進化しています。だから選手としては、常に向上心を持って練習からプレーできています。完成を求めているけれど、相手に分析されるから進化しなければいけないので、監督の頭の中はどんどん進化しているんです。だから早くその頭に、僕たちの技術と頭が追いつかなければいけないんです」

 1年半というベースがあるからこそ、2021年の進化がある。それを静岡キャンプでひしひしと感じてきた。何よりも求められるのは、ゴールだ。

「去年までは決めきるところで迫力が欠けていました。ゴール前の迫力、人数のかけ方、ボールの運び方で少しずつチャレンジが増えてきています。ゴールに直結するプレーが求められていますね。結果を出さないと試合には勝てないのは、1年半やってきて全員が分かっていること。得点に直結するプレーが最優先で求められています」

 昨年は見事にボールを走らせて相手の穴を突き、翻弄してきた。にもかかわらず、フィニッシュに挑まないまま最後の一突きをちゅうちょして、ゴールを奪えず、大量の勝ち点を失ってきた、という猛省がある。

 永井監督は単に「ゴールを目指せ」の言葉だけで済ませることがないから、選手は自然に耳を傾ける。佐藤は「説明するのは難しいんですよね」としながらも、最適な言葉を探しながら、永井イズムの解説を試みた。

「永井さんは最初は『80パーセント以上のボール保持』ということを言っていましたが、いまは『80パーセントのゲーム支配』に変わっているんです。最初は保持するのが80パーセントというところからこのサッカーを始めることが大事でした。非常に分かりやすくスタートしたんです。でも、それだけでは勝てないことはもう分かっています。相手にボールが渡ると保持できなくなるから、シュート数が減ってしまっていた。でも、シュートを打たないと入らない。いまはシュートの選択肢が最優先だと監督は言っています。打つところは打つ、チャレンジするパスは出す、というようにどんどん変わっていっているんです。ボールを持つだけではないんだよ、ということは、選手の頭の中にどんどん入ってきています」

 サッカーを見る視点を変えたのだ。ゲーム支配というのは、ボールを持つことだけで成立するものではない、というように。

「自分たちはつなぐことがメーンとされていますけれど、裏でフリーになるならそこを選択するし、ドリブルで運んでシュートを打つことも選択肢になります。きれいなサッカーと言われてきたけれど、強引さも必要だし、ゴール前の迫力に欠けているのは明らかで、もう少し泥臭く変わっていかないとこじ開けられない。自分たちのサッカーには結果が大切だと分かってきています。そして、これまでのベースがあるから、こういう話ができるんです」

 この1年半の基礎から、2021年バージョンへとチューンナップの真っ最中。そのために、練習を撮影した映像をミーティングで見て分析しているのだという。

「簡単に言うと、11人全員がボールがどこにあってどこに運ぶかが分かるようにすることです。ボールに関わっていない人、ベンチにいる人も、スタンドにいる人もみんなが分かる運び方をしようということです。監督は『俯瞰力』と言いますけど、本当に大事なことで、頭の中で周りの選手がどこに走っているのかがいまは自分の中で分かります。例えば、ワイドストライカーがどこに走っているのか、どこに走りたいのかが分かるんです。俯瞰した練習の映像をミーティングで見るチームはなかなかないですよね。僕は初めてです」

 昨年までの「面白い」サッカーに、唯一足りなかったゴールという結果を組み込むために、佐藤は頭をフル回転させる毎日だ。

 2021年、ヴェルディのサッカーはきっと、もっと面白い。


This article is a sponsored article by
''.