上写真=毎日の練習が楽しくて仕方がないという長井一真。開幕スタメンを狙っている(写真◎KYOTO.P.S.)
レジェンド・中山博貴氏からの「公認」
2021年シーズンに関西大から京都サンガF.C.に加入したルーキーDF長井一真は、一足早く2020年シーズンに特別指定選手としてデビューしている。第2節ジュビロ磐田戦、第17節ジェフユナイテッド千葉戦、第18節ザスパクサツ群馬戦の3試合で、いずれも終了間際にピッチに入った。
磐田戦でのある出来事が、いまだに脳裏をよぎる。
「ジュビロ戦がデビュー戦になったんですけど、プロというものを感じたのはピッチに入ってすぐでした。こちらのカウンターのシーンがあって、右のウイングバックだったんですけど、フリーランでゴール前にスプリントして入っていって、ボールを受ければチャンス、というところで、大学の試合なら相手を振り切れていたんですけど、マリーシアというか、相手に足をかけられてコケてしまって、ゴール前に入れなかったんです」
プロのピッチに入ってすぐのファーストチャンスで、まさかの転倒…。「そういった部分で大学生では味わえないことをプロで味わえました」と前向きに消化しているが、足をかけられた相手のことは「その瞬間は頭に血が上って覚えてないです」と笑った。
プロとして改めて第一歩を踏みしめる今季、いわばそのときのリベンジの舞台にもなるだろう。「準備はできています」とニヤリとするあたりが頼もしいが、自ら選んだ背番号が15であることもその力強い精神性を示すエピソードだろう。レジェンドの中山博貴のナンバー15。
「京都サンガにとって歴史と伝統のある番号で、背負えるのを誇りに思っていますし、プレッシャーの中で戦う覚悟ができています。15で新しい歴史をつくりたいと思います」
2004年から引退する15年まで長きに渡って背負った中山氏には仁義を通した。
「直接電話をして、15を着けさせていただきますと連絡しました。よし、それでいこう、と言われました」
その礼儀正しさでしっかりと「公認」を得て、新しい「15番像」を積み上げていく。
「僕の特徴として、ディフェンスですけれど足元の技術やフィード、対人のところで自信を持っています。そこはプロ相手にも通用すると思います。逆に、止めて蹴るという基礎技術のところや動き出し、ポジション修正や頭を使ってプレーするところは足りていないと感じています」
ただ単に通用する自信だけを押し出すのではなく、ないものをないと強く意識して口にする。そこに、インテリジェンスの匂いもする。
「大学の最後の年やその前の年はセンターバックで出ていたので、そこで持ち味を出せると思います。それ以前にはサイドバックも経験していたので、そこでも長所は出せます。出られるならどこでも出る覚悟はできていますし、ウイングバックはあまりやったことがなかったですけど、サッカーの原理原則は同じだと思うので、そつなくはこなせたました。でも、特徴は出せずに終わったかな」
描くイメージは最終ラインのどこかでプレーする自分だが、チョウ・キジェ監督はその能力をどこでどのように生かすのだろう。長井はそれを吸収する毎日が、楽しくて仕方がないという。
「制限のかかった中でのトレーニングやゲームは正直、あまり得意ではないんですけど、チョウさんのトレーニングで僕自身が成長を毎日感じています。毎日練習が楽しみで、ワクワクしています!」
ワクワクの分だけ、どんどんと伸びていくだろう。
「開幕スタメンは最初の目標として決めています。そこに向けてやっていって、そこからシーズンを通してチームを勝たせられる存在になっていきたいと思います」
迷いなくきっぱりと宣言するその姿勢こそ、新生サンガにふさわしい。