上写真=荻原拓也の明るく元気なキャラクターはチームを活性化する(写真◎京都サンガF.C.)
「気遣い」と覚悟のモノマネ
つかみはOKだ。1月21日にYouTubeでライブ配信された新体制発表会で、荻原拓也は自己紹介の場で自らすすんで「モノマネできます!」と言って、タレントのIKKOのマネを全力でやって見せて、ファン・サポーターの心をつかんだ。
「会見でもそうでしたけど、自分のキャラを前面に出していきたいですし、明るい雰囲気を出すことでチームがいい方向に行けばいいと思います」
いわば「気遣い」のモノマネだったというわけだ。裏を返せば、覚悟の現れ。浦和レッズのアカデミー出身でトップ昇格したが、2020年シーズン夏にアルビレックス新潟へ期限付き移籍し、今度は京都へ。できることがあるのなら、ピッチの中でも外でも何でもやる、という意欲がにじみ出た。
「まずはすごくいいオファーをいただいて、チョウ監督が指揮を執るということで成長できるチャンスだなと。いいタイミングだと思ったので決断しました。何がいいのか悪いのか、メリットもデメリットもたくさんあると思うけれど、自分の直感的な部分を信じて選びました」
モノマネが効いたのか(?)、「全体的に明るくて、勝つ厳しさも持っていい雰囲気でやっています。練習が楽しいなと思えています」というから、新しいチームでのスタートは上々のようだ。
4バックの左サイドバック、3バックの左ウイングバックに適性を持つが、プレー面での自己分析は「やれることは多くはない」と意外な表現をする。ただそれは、やれることに自信を持っているから。
「後ろに比重を置くというよりは、前に攻めていくタイプです。点に絡む仕事をできればと思っています。勝利のために戦える選手で、やれることは多くなはないと思うけど、長けているものはあると思うので、その強みで勝負したい」
長けているもの、とは、間違いなくその左足である。速くて力強くて重々しいボールが飛んでくるので、守る方はやっかいだ。新潟ではFW鄭大世(現FC町田ゼルビア)にキックの質を細かく要求されて、レベルアップした実感がある。
「テセさんと一緒にプレーしてからクロスに対してすごく要求されて、クロスの概念がそもそも変わりました。
いままで狙っていたピントが違うというか、以前は人に合わせるイメージだったんですけど、そうじゃなくてもっと前に出せという要求でした。そこからまず、いままでと全然違うわけです。センターバックの向こう側にいる味方に合わせようとしていたのが、キーパーをめがけて蹴れと。そこで曲がるボールを蹴ると、ちょうどいいところにいくようになりました。
タイミングで言ったら、いままでヘッドダウンしてしまって蹴れない状態だったところで、常にヘッドアップしてテセさんの動きを見ていたら、いつもなら蹴ることができなかったところでクロスを上げられるタイミングがあったんです」
こうして得意の左足を磨いたことに加えて、アルベルト監督の指導で「長所を最大限に出すためにどういったプレーするかを学びました。強みを出すための選択やポジション取りのところですね。プレーの選択はかなり変わったと思います」というから、実戦の中で2人の教えを染み込ませるための貴重な半年になった。
そこに今度は、「チョウの教え」を加えていく。
「細かいことで言ったら、常に予測して相手よりも先に動けばより自分のスピードをもっといい状態で発揮できるんじゃないかと指摘されました。チーム全体としても守備のときでも攻撃のことを考えてプレーするように、と言われています。予測して動くというのはいままでやってこなかった感覚というか、常に頭をフル稼働させてプレーしなければいけない。何も考えずになんとなくプレーする、というシーンがなくなって、毎日楽しい練習です」
クロスの質が変わり、プレー選択が変わり、頭の中が変わった。荻原拓也、大化けの予感である。