京都サンガF.C.で2020年にキャプテンを務めた安藤淳が引退を発表したのが1月14日。1週間後の21日に引退会見を行った。昨季終盤に判明した病気の関係で現役生活を終えることになったと明かしたが、次のステージへ前向きに笑顔で進んでいる。

上写真=引退会見に臨んだ「あんちゃん」こと安藤淳。ブランドアンバサダーという新しい役職に就いた(写真◎京都サンガF.C.)

「ワクワクすることができたらな」

 年を越してからの引退発表には、理由があった。

「僕が最後に出た11月の終わりの甲府戦で少し接触して、左肩の痛みとしびれがあったんです。以前からずっとそういう感覚はあって、いままでなら次の日から良くなっていたのが、どんどん悪化して、おかしいなということで詳しく検査してもらいました。首に異常がある、神経に傷があって脊髄の神経が白くなっているということでしっかり検査してもらったら、12月2週目に結果が出たんです。その時点でドクターから、サッカーをプレーするリスクを聞かされました。自分としてはまだプレーしたかったし首の状態以外は元気なわけですから、診断が覆るかもしれないという期待を持ちながら病院に通い続けていて。でも、そのときから引退も覚悟はしていました」

 現在も検査を続けているため、正式な病名は分かっていないが、「おそらく脊髄空洞症なのではないか、と言われています。外傷でできたのかもともと持っていたものなのかも分からないけれど、次に接触したらもしかしたら下半身が動かなくなる可能性も、ということでした」

 だから、「やり残したこととかやりきれなかった思いはめちゃくちゃあって、思い描いていた退き方ではないので悔しい思いだらけなんです」と語気を強めたが、「サンガで最後を迎えられたのは幸せだと思います」とも言って、笑った。

 2006年に特別指定選手として京都の一員として登録され、07年からプロ契約、セレッソ大阪、松本山雅FC、愛媛FCと移って、19年に京都に戻ってきたのは運命だろうか。その時点で最後はサンガで、の思いはあったという。

「デビュー戦となった札幌戦(2007年J2第1節)は記憶に残っていますし、初めて点を取った試合(2008年J1第19節、柏レイソル戦)もそうです。楽しかった試合は、天皇杯準々決勝の鹿島戦ですね(2011年)。プレーしている感覚というか、結果的に勝ったんですけど、僕の中で喜びというかサッカーをした楽しさで言えば大きかったです」

 そんな風に14年を駆け足で振り返ったが、すでに京都の「ブランドアンバサダー」という立場で活動を始めている。その目標を「サンガスタジアムをいっぱいにすること」に設定している。

「急に終わってしまって、現役を続けるつもりだったので遠い未来までは分からないですけど」と前置きしつつ、新しいステージでの意欲がこぼれ出てくる。

「自分の中で考えているのは、サンガスタジアムをいっぱいにしたいという思いがあって。選手の立場からすると、満員のスタジアムが一番なんですよ。それは間違いないんです。そこで、プロを退いたからこそ、僕にしかできないことがあると思います。地域の皆さん、地域や行政の皆さん、サポーターの皆さん、会社のみんなと作り上げながら、ワクワクすることができたらなと思っています」

 京都でプロのキャリアを始め、京都でそのピリオドを打ち、京都で新たなステージに進む。だからここは「心のクラブ」だ。これからは、自分と同じように多くの人々が京都を心のクラブと呼べるような価値を積み上げていくのが仕事になる。

「サッカー選手になることは夢がありますし、素晴らしいことです。僕自身も選手になって、今回辞めることになったけれど、サッカー選手になってよかったと実感しています。その夢のあることに対して僕が経験して感じたいろいろなことを伝えたいと思っています。
 中でも京都サンガという存在をもっともっと向上させるために、みんなで作り上げたいんです。選手たちだけで作っているのではないし、地域の方がサンガを『応援する』のではなくてサンガを『作る』イメージで取り組んでもらうことができればいいなって。サンガに関わる価値、お子さんたちや地域の皆さん、サポーターの皆さんなど、いろいろな人たちが『オレらが作ってるんだぞ、オレたちが盛り上げて価値を上げてスタジアムをいっぱいにしているんだぞ』という動機を作っていきたいと思います」

 冷静に、賢く、でも愚直に、真っ直ぐに。安藤淳は現役時代に見せたそのプレーと同じように、京都サンガF.C.という新たなブランドを築き上げていくだろう。

安藤 淳(あんどう・じゅん)
■生年月日 1984年10月8日(36歳)
■出身地 滋賀県
■身長/体重 178cm/72kg
■ポジション DF
■サッカー歴
静岡学園高校→関西大学→京都パープルサンガ/京都サンガF.C.→セレッソ大阪→松本山雅FC→愛媛FC→京都サンガF.C.
■通算出場記録
Jリーグ通算:321試合15得点
カップ戦通算:8試合0得点
天皇杯通算:22試合3得点


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