上写真=前寛之は決勝ゴールのきっかけとなるパスで貢献した(写真◎J.LEAGUE)
「下を離して上に追いついていこうと思います」
「前日の結果が分かっていたので、みんな『ここでやらなきゃ』という思いは強かったです」
J2第37節は大宮アルディージャに1-0の勝利。昇格へ向けてしびれる試合が続くが、前寛之とアビスパ福岡の選手たちには、特にこの試合で燃える要素があった。前日にライバルのV・ファーレン長崎がアルビレックス新潟に勝って勝ち点70で並ばれた格好になり、暫定順位表の上では長崎が2位、福岡が3位と入れ替わられていた。
福岡も大宮も堅い守備がベース。だから拮抗した展開になったのだが、とりわけ大宮の計算された組織に福岡の良さをうまく消し込まれていた。しかし、「ミスで良くない時間になってから修正できたのが一番のポイントだった」と前は胸を張る。
「攻撃では短いパスでボールを動かしながら、守備でいえば前から走って中盤で取る回数が増えればリズムは出ると思っていました。だから、取る回数が増えたのが、修正できたポイントですね」
ボールを足元に置いて時間をコントロールできるのが、前の強み。その象徴であるボールを「奪う」ことで、慌てずに少しずつ勝利に近づいていった。決勝ゴールも「奪う」ところから。58分、中盤で相手のトラップミスを見逃さなかった重廣卓也の守備が、やはりきっかけになった。そこから前が受けて増山朝陽を経由、右ワイドに進出したエミル・サロモンソンへとつながった。十八番のクロスが中央で構えていたフアンマ・デルガドに届いて、ヘッドで豪快に叩き込んだ。
「シゲ(重廣)が取りきってくれて、僕も前向きに持ったところからスタートしました。(遠野)大弥が左に見えたのと、右には朝陽がいいところに立っていてくれて、エミル(サロモンソン)が上がってくると思っていました。あとはエミルのクロスの質とフアンマの中での質がかみ合ったいい得点だったと思います」
奪ってからおよそ12秒でゴールを決めきるという素早さは、まさに福岡の真骨頂だった。
ファジアーノ岡山、ツエーゲン金沢、京都サンガ、愛媛FC、そして徳島ヴォルティス。残りは5試合。「内容だけでは語れない5試合になってくると思います」と前も決意表明だ。
「結果に貪欲になって、個人の良さを出すことがチームの良さを引き出すことになると思うので、精一杯やって勝ちを拾って、下を離して上に追いついていこうと思います」