上写真=右サイドで起点になって攻撃を作った渡辺凌磨。古巣戦に燃えた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月4日 J2リーグ第31節(@NDスタ:観衆2,579人)
山形 1-2 新潟
得点者:(山)ヴィニシウス・アラウージョ
(新)矢村健、ロメロ・フランク
「勝てているときのメンタリティーを」
モンテディオ山形1-2アルビレックス新潟。スコアの上では僅差だが、実態は違った、と山形の石丸清隆監督。選手たちが「怖がっていた」と渋い表情だった。プレーについて評価する前に、プレーすることさえできていなかったのだ、と。
昨季まで新潟でプレーし、今季は山形で攻撃の軸になっている渡邊凌磨も、静かに振り返る。
「想定していましたけど、新潟が前から(プレッシャーをかけに)来るのに手こずりました。うちのボランチ2枚にプレスに来たところをはがすのは、チームとしてもっと工夫してやらなければいけなかったと思います。みんな前半の入りから1対1でやるべきことをやるという部分が欠けていました」
繊細なボールタッチとひらめきあふれるアクションで見る者を楽しませるのが一番の魅力だが、実は守備能力が高い。ボディーバランスの良さでボールと相手の体の間に自分の体をねじ込み、するりと奪う。しかしこの日は自らも含めて、その1対1の強さが足りなかったと悔やんだ。
7月19日の前回対戦では新潟のホームに「帰還」して1-1のドロー。ただし、66分からの途中出場だった。だから、渡邊の新しいホームに彼らを迎え撃つゲームで先発した今回は、負けたくなかった。右サイドハーフとして対峙したのは、昨季ともに戦った堀米悠斗だった。昨日の友は今日の敵。彼をいかに破るか。
「相手の左サイドバックがボールに食いついてきたので、足元で受けるよりも背後に流してもらって攻めた方がいいと思っていました。(堀米は)足の速い選手ではないので、背後を取ればいけるかなと。だから、食いつかせて、というところは意識してやっていました」
右センターバックの熊本雄太からパスが出た20分のシーンが好例だ。高い位置を取った堀米の裏を渡邊が狙い、そこに出たロングパスを収めて抜け出し、シュート気味のセンタリングを狙った。舞行龍ジェームズのスライディングにあって足に当たり、それでもゴールを強襲したボールは結局、GK藤田和輝に阻まれるのだが、駆け引きに完勝したアタックだった。
ほかにも右サイドを起点にしてチャンスメークに奔走したが、かなわなかった。先制ゴールを奪われたのが痛かったという。
「(前節の)京都戦でもそうですが、先制された試合はすごくみんなが一気にガクッとくるのが分かるんです。メンタリティーの部分が大事になるので、勝てているときのメンタリティーを個人個人が持ってやるべきです。技術面だけじゃなくてメンタル面が大事ですから」
山形に移籍してきて選んだ背番号40は、昨季新潟で引退した小川佳純がつけていたもの。名古屋グランパスでJリーグを制したこともある小川が持っていた勝者のメンタリティーを、自分自身を通してチームに植え付けたいという覚悟の現れでもある。
これで連敗。だからこそ、引き分けを挟んで4連勝した10月のメンタルを思い起こすべく、仲間に訴えかけ続けるのだ。
写真◎J.LEAGUE