上写真=長いリハビリを経てGK練習に合流している椎名(写真◎石倉利英)
「日常に戻ったという感じ」
全体練習から少し離れた場所で行なわれているGK練習の輪から、ひと際大きな声が何度も響き渡る。現在は練習見学が中止されているが、ファジアーノ岡山の練習ではファン・サポーターにとっても聞き慣れた声だろう。
GK椎名一馬は今年3月8日の練習中、右ヒザ前十字靭帯を断裂する重傷を負い、4月2日に手術を行なって全治6カ月と診断された。だが長いリハビリを経て、2~3週間前からGK練習に合流するところまで回復。10月29日は、フィールドプレーヤーも交えた実戦形式の練習には加わらなかったものの、GKだけの練習は同じメニューを消化した。
約半年のブランクがあるものの「戻ってきたという感じもありつつ、なぜかは分からないですけど、それほど離れていた気がしません」と笑う。「6~7カ月は長いはずですが、そんなに長かったかな。練習に入ってもあまり違和感はなく、日常に戻ったという感じ」で練習に取り組む日々を送る。
プレーの感覚を取り戻している最中で「多少ズレがありますが、少しくらい悪くても仕方ない、悪いのは当たり前だと思っている」と語る。「心の準備ができているぶん、こうじゃない、できていない、という感じはないので、焦りは全くない」という心境で臨んでいる。
スタンドやDAZN中継で試合を見ながら、チームの状態を「なかなか勝てない時期もありましたが、少しずつ良くなって、しっかりしてきた」とみている。一方で練習に取り組む姿勢などで、もっと良くすることができる面があると感じており、「チームとして一つになるところで、突き詰められるものがあるのではないか」と考えている。
一つになって進むチームの一員として、まずは完全復活を目指すが、手応えはつかんでいる。ここまでの過程で、やるべきことをやってきたと確信しているからだ。
「若手の選手にも言ったのですが、大きなケガをすると『どうなるんだろう』『自分のサッカー人生はどうなっていくんだろう』という不安があると思います。でも自分は絶対に、大きなケガは選手として、一人の人間として、強くなれるチャンスだと思う。今回もケガをした瞬間から、サッカー選手としてさらに成長できる半年にしたいと思っていて、成長できたと思っています」
もちろん、それで終わりではない。
「ここからも、もっと成長できると思っています」
完全復活を遂げたとき、これまでとは違う椎名一馬の姿が、そこにあるはずだ。
取材・写真◎石倉利英