上写真=相手のCBにプレスをかけて、東京Vのビルドアップを妨げ続けた栃木の明本(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月17日 J2リーグ第27節(観衆1,842人/@味の素)
東京V 0-0 栃木
僕が決め切っていれば勝てた試合(明本)
第一のタスクはゴールに違いないが、この試合では守備のスイッチを入れるという重要な役割も担っていた。明本は2トップを組んだ榊と共に相手にプレッシャーをかけていった。
CBからボランチへのパスコースを限定しつつ、東京Vのビルドアップを制限。その働きについては田坂和昭監督も認めるところだった。
「ポジションにつく前にプレッシャーをかけてボールを奪ってしまおうと。今日の試合は、それが一つのポイントでした。2トップ(榊、明本)はそういう意図で起用し、彼らにスイッチを入れてもらおう、中を締めてもらおうと思いました」
その積極性と献身性がチームをやる気にさせたと言っていい。明本と榊によるプレッシャーと連動してプレスをかける2列目以降の選手たちによって、東京Vは意図するポジションが取れず、ボールは持っても意図する場所に運べないケースが何度もあった。
「僕はスイッチを入れるだけなので、相手のCBに対して限定し、相手ボランチに対してもコースを切りながらというところを意識してプレスをかけていました。それができて、僕らの武器であるアグレッシブさは前面に出せた試合だったかなと思います」
リーグでも屈指の攻撃力を誇る東京Vとスコアレスドローを演じることができたのは、集中力を切らさずに栃木の選手たちが一人ひとりがチームファーストのプレーを全うしたからだ。その中でも明本は前線でアグレッシブに走りまくった。
ただ、守備では手応えを感じられた一方で、本人は攻撃面において悔しさを口にした。
「僕が打ったシュート数は5本で、そのなかで決定機もありました。決め切っていれば勝てた試合だったなと思います」
例えば、15分。味方がプレスで奪ったボールがラフに前方へ送られたところに鋭く反応し、相手DFに競り勝って左足シュートを放ったが、右に逸れた。49分にも連動したプレスで相手のミスを誘い、エリアのすぐ外、ゴール正面から左足を振り抜いたが、GKマテウスにキャッチされた。そして55分には溝渕のクロスに飛び込んだが枠をとらえられず、67分にも同じように溝渕のクロスにヘッドを合わせたが、マテウスの好守にあって決め切れなかった。
この日の働きを攻守に分ければ、守の方が目立ったかもしれしない。だが、良い守備があればこそ、これらの決定機をつかんだと見ることもできる。チームは5戦未勝利となったが、持ち味を出せたという点では価値ある90分だったはずだ。ゴールこそ決められなかったが、明本は持ち味を出し、勝ち点1の獲得に間違いなく貢献した。