上写真=草津戦で途中出場で復帰した河野。ケガも癒えて、ここから巻き返しだ(写真◎J.LEAGUE)
「点を取るために入った」
J2第19節のザスパクサツ群馬戦、77分のことだった。タッチライン際のセンターに東京ヴェルディの背番号7が立つ。河野広貴の登場だ。
開幕戦のあと、6月27日の再開初戦に交代出場、翌3節でベンチ入りしてからは姿を見なくなった。「右ヒザをケガしていたんです。練習を始めても別メニューは1カ月半ぐらいあったかな」
およそ3カ月半ぶりの公式戦では、1-2とビハインドの状況での起用になった。だから「逆転するために、点を取るために入ったので、そういう指示をもらって」勇んで飛び出していった。
久々のプレーは「(前線の)真ん中に入ったので、サイドから来るボールを受けたり、相手の間に入って受けたら落としてあげたり、(相手ボールのときに)前から追うというところもそうですね。サイドの選手と入れ替わってもいいと言われていたので、もっと左右に入って流動的になっても良かったかなと」
「クロスを上げていくところや最後のところの精度の問題はあるけれど、攻めきれるところは攻めきれていました。あとは、シュートとクロスの精度、それから相手のカウンターへの準備が僕を含めて足りていなかったと思います」
82分に逆にカウンターで群馬に3点目を奪われ、そのまま1-3で敗れてしまった後悔が、どうしても残る。
ピッチに立てない間は、仲間のプレーを見る側になった。「すごくいいなあ、と思ってみていたんですよ。いいゲームができていたし、若い選手もいい動きで頑張ってくれていました。だから僕も負けないように、休んでいる間にいい刺激をもらったと思います。これまであまりゴールを取れなかった選手が取っていたり、動きがいい選手が多かったので、競争ですね」
その視線はものすごく温かいのだ。兄貴分、と永井秀樹監督は表現する。そして、声を大きくして褒めるのだ。
「ゴール前の最後のところで彼しか持っていないものがありますから、いいアクセントになってくれればと思っています。そして、ピッチ上だけではなくピッチ外のところで、本当に頭が下がるぐらいにチームのためにいろんなことをやってくれているんです。若手もこういう先輩がいることが力になっていて、プレー以外でも欠かせない存在です」
アカデミー育ちのレフティーも、気づけば30歳だ。J1、J2通算で243試合に出場していて、キャリアも豊富。その選手が若手を引っ張っていく姿が頼もしいのだと、永井監督は信頼を寄せている。
若い選手が才能を生き生きと発揮できているのは、河野のバックアップのおかげかもしれないが、まだ彼らに主役の座を渡すつもりはない。ケガから復帰したいま、今度はピッチの上でボールと信頼の両方を集めて、堂々と「兄貴」になってほしい。