上写真=高木監督は選手たちの意欲を前向きにとらえている(写真◎大宮アルディージャ)
「同情するところもある」
9月9日のJ2第18節FC琉球戦でまさかの0-5という大敗を喫した4日後、第19節のモンテディオ山形戦は1-1のドローだった。高木琢也監督はこの結果に一定の評価を与えている。
「琉球戦が終わって次のゲームということで、なかなか難しいと思うんです。僕は監督として選手たちに要求をする立場ですけど、自分が選手だったらしんどいなというところがあるし、選手にもそう言いました。忘れるのは難しいだろう、選手経験もあるから分かるし、同情するところもある、と。でも、このチームのいいところなんだけど、みんなよく頑張るし、整理したものを提示することでコミュニケーションを取ってやってくれると信じることができるので、その点での不安はあまりありませんでした」
琉球戦から中3日で修正できたポイントは守備の部分。「ディフェンスの対応ではサイドのウイングバックの選手が、琉球戦では切り替えのポジション修正がうまくいかなかったのですが、ポジショニングをかなり意識してくれてこの試合ではうまくいきました」
それは攻撃にもいい影響を与えていて、「点を取ったのはワイドが絡みながら、最終的にはアキ(河面旺成)のクロスから得点になりました。ああいう絡み方も良かったので、そういうシーンを多く作っていくのが大事になっていきます」と改めてサイドの重要性を実感している。
振り返ってみると、5分の先制ゴールは、右からの渡部大輔のクロスを逆サイドで待っていた河面旺成が左足のダイレクトでシュート気味のセンタリングを低く送り、中央を横切ったボールを、走り込んでいた小島幹敏が無人のゴールに流し込んだものだった。右から左へ、左から右へという大きなボールの動きが、渡部と河面の両ウイングバックを介して実現したことに、髙木監督は価値を見出しているのだ。
時計の針をもう少し巻き戻してこのシーンを見てみると、さらに重要な意義があったことが分かる。
この攻撃はGKフィリップ・クリャイッチのところから始まっていて、左サイドに回して相手のプレスをパス交換ではがしてからゆっくりと前進、三門雄大、菊地俊介、河面とつないで左サイド奥に進入し、河面がクロスを送った。これを右サイドで渡部がシュートして、そのこぼれ球を相手がクリアしたのだが、小野雅史がヘッドで中央のイバにつなぎ、得意のポストプレーから下げて三門が右へ展開し、ここから渡部がクロスを上げて…と上のシーンにつながっていった。
主体的にビルドアップしながらパスで前進し、渡部も河面もそれぞれ2度に渡って攻撃に関与、イバのポストプレーや三門の展開力も絡めて崩した。小島が決めたことについても「意外な点の取り方でした」と驚いた髙木監督は、「クロスに入っていく得点は初めてのような気もするので、こういうことを覚えていけば良いのではないか」と成長に目を細める。さまざまなプラスの要素が散りばめられたゴールだったから、なおさら価値がある。
大敗からのリカバリーを目指す状況の中で、多くの選手が持ち味を出し合って決めてみせた。これはただの1ゴールではなく、大宮の近未来を照らす大きな意味のある一発だったのではないだろうか。