上写真=攻める東京Vと守る愛媛。90分の多くがその構図だったが、勝ったのは愛媛(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月5日 J2リーグ第17節(@味スタ:観衆1,781人)
東京V 0-1 愛媛
得点:(愛)丹羽詩温
「ありがちな言葉になってしまいますが…」
試合が動くのは早かった。愛媛FCは17分、右サイド深くへと送られたロングパスに西岡大志が追いつき、マイナスに戻すと、森谷賢太郎がワンタッチクロス、これを丹羽詩温が右足で豪快にボレーシュートを叩き込んで先制に成功した。
ボールを大事にするチーム同士の対戦だったが、攻め合いというよりはつぶし合い。東京ヴェルディがボールを動かそうとするものの、厳しいマンツーマンマークで守る作戦で挑んだという愛媛が縦パスをすべてつぶしにかかったからで、東京Vはなかなか前を向いて攻めることができなくなっていく。その厳しいプレスを回避するために生きたのが、右サイド。ワイドに張っている小池純輝が相手最終ラインの裏のスペースにスプリント、ここへ低い位置から送り込んで攻める、というパターンで活路を見出そうとしていった。
後半に入って一度は落ち着いたものの、愛媛の厳しいチャージとレフェリングへの疑問がきっかけに不穏な空気になっていく。愛媛は交代選手を活用しながら選手の配置を5-4-1にしてブロックを形成、これを同じく交代選手を送り込んで攻撃陣を活性化させた東京Vが崩しにかかる、という展開になっていった。
ほとんど愛媛のコートで試合は進み、再三東京Vが決定機を迎えるが、74分の井出遥也のダイレクトシュート、75分の佐藤優平の思い切りの良いミドルシュート、83分のカウンターからゴールに近づいた松橋優安のシュート、アディショナルタイムの若狭大志のシュートなど、ビッグチャンスにいずれも決まらずにタイムアップ。
1-0で逃げ切りに成功した愛媛の川井健太監督は「私にとってヴェルディさんは特別なチーム。ほかが相手のときはあまり考えませんが、何をしたら嫌がられるかを考えて、それを選手が表現してくれて、前半はパーフェクトに近い出来でした」と作戦成功を称えた。東京Vはその前半の出足の遅れが響き、永井秀樹監督も「こうした試合ではありがちな言葉になってしまいますが、最後で仕留めるフィニッシュの精度を全体で上げていくところをまた努力していきたい」と反省するしかなかった。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE