上写真=ボランチの一角として今季初先発し、勝利に貢献した平塚(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月2日 J2リーグ第9節(@Ksスタ:観衆1,660人)
水戸 3-2 金沢
得点:(水)山口一真、中山仁斗、アレフ・ピットブル
(金)加藤陸次樹、ルカオ
「自信になるけれど、まだまだ課題も多かった」
「This is football!!」
試合後のインタビューで秋葉忠宏監督が声を張り上げたように、水戸にとってはサッカーの醍醐味を実感する一戦になったことだろう。先制するも追いつかれ、逆転され、それでも反撃して同点に追いつき、後半アディショナルタイムに勝ち越し。ホームのケーズデンキスタジアム水戸は、試合後も劇的な勝利の余韻が残った。
そんな中、リモート会見の席についたMF平塚悠知は落ち着いていた。後半のアディショナルタイムが5分になろうとするとき、目の前のボールを必死に蹴り上げてタイムアップの笛を響かせ、ピッチに仰向けとなった背番号25は、「バタバタした展開ではあったけれど、勝ててよかったです」と、静かに勝利の喜びを噛みしめた。
この日、秋葉監督から先発のピッチに送り出された11人の中で、唯一の初スタメン。「ボールを保持するときに落ち着かせることだったり、展開していくことは自分の持ち味なので、それらを意識して(試合に)入りました」。4-4-2システムの心臓となるボランチを、山田康太とともに担った。
体中に血液を送るように、平塚は周りの選手たちにパスを供給していく。横や後ろへとボールを裁くだけでなく、前方へのパスコースを見つければ、縦へ、斜めへ、相手守備陣にくさびを打ち込んでいった。
「ボランチだったので、うまくゲームをコントロールしながら存在感を出していければと。うまく(パスを)散らしながら、前半は攻撃の起点にはなれていたのかなと思います。後半はしっかりとラインを落としながら、相手のフォワードの選手を(味方のDFと)挟んだり、そういったことを意識しながらやっていました」
水戸が挙げた3得点をアシストしたわけではなく、試合結果を左右させるような目立った仕事もしていない。山田や平野佑一といったボランチの相方よりも低いポジションを取ることも多かった。それでも、相手がボールを保持すれば空いているスペースを埋め、味方がボールを持てば空いているスペースに顔を出し続ける。黒子のような存在感を放ちながらチームを支え、着実に勝利へのストーリーを紡いでいった。
「1対1の局面をつくる回数を増やしてくる相手だったので、ワンタッチで外していったり、そういったところは要所でできていた。1点目はそういう前のプレーがあったから、(ゴールに)つながったのかなと。(終盤は)相手も疲れてくると分かっていたので、ボールを動かしながら、来た相手をはがせばチャンスになるだろうと。そこで3点目をそういった形で取れたのかなと思います」
試合前日に関東地方はようやく梅雨明けしたが、季節は夏真っ盛りの8月。ただ、全42節を戦う長丁場のJ2は、まだ9節を終えたばかりだ。3勝3分け3敗と、星を五分に戻した水戸の戦いも、まだまだこれからだ。
「(勝利できたことは)自信になるけれど、まだまだ課題も多かったので、今後に生かしていけたらなと思います。(次に)出た試合も結果にこだわっていきたい」
これからも平塚は、木村祐志、平野、山田、安東輝という実力者がそろう中盤の定位置争いを繰り広げながら、チームを上昇させていく。
現地取材◎サッカーマガジン編集部 写真◎J.LEAGUE