上写真=矢田は「他の選手にないようなプレーを」と自分を信じて前を向く(写真◎ジェフユナイテッド千葉)
「手を抜かずにやってきた自負はあります」
尹晶煥監督がやってきて、ディフェンスの哲学を植え付けられているジェフユナイテッド千葉。タイトなブロックを作りながら相手の進入を阻み、攻撃に転じていくスタイルだ。
そんな中、昨季の主力の一人、矢田旭は激しいポジション争いに挑んでいる。今季の右サイドはサイドバックの田坂祐介とサイドハーフの米倉恒貴のセットが好連係を見せていて、ファーストチョイス。矢田は右サイドハーフとしてそこに割って入ろうと戦っている。
今季初出場はJ2第5節のツエーゲン金沢戦。尹晶煥監督が前節からGK新井章太以外の10人を総入れ替えするというメンバーで臨んだが、シビアな守備を仕掛けてくる相手に2-0と完勝したのだった。その試合で、右サイドハーフとして先発したのが矢田だった。
「公式戦に絡めていなくて難しさはありましたが、普段の練習や練習試合で手を抜かずやってきた自負はあったので、それを信じてやりました。練習でハードなことができていたので、試合勘だけは心配でしたが、それ以外はいいコンディションを保てていました」
その結果が、「実質2アシスト」である。
まず23分に、一生心に残るであろう、最高の思い出をプレゼント。右サイドからクロスを上げてお膳立てした、FW櫻川ソロモンのデビュー戦初ゴールだ。
このシーンで重要なのは組み立ての部分で、自陣で見木友哉からボールを受けると、右横を走った右サイドバックのゲリアにすかさず預け、自分はその外を回った。ゲリアが内側から運び、自分は外側に立つという関係性で相手陣内に入り込み、ゲリアからワイドの位置で受けると、自慢の左足に持ち替えてニアにパーフェクトクロスを送り込んだ。櫻川がGKと競り合ってこぼれたところを自ら押し込んで決めたが、「田坂&米倉」のセットにも対抗できる右サイドのコンビネーションを見せたのだ。
続いてその10分後の追加点のシーン。「2点目は決められるチャンスがあったので、決めきらないと悔いが残りますね」と本人も苦笑いなのは、まさかのミスがゴールにつながったから。左サイドからの為田大貴のクロスを中央で佐藤寿人がヘディングシュート、左ポストを直撃したボールが目の前にこぼれてきて、得意の左足を振り切って今季初ゴール…と思った瞬間に空振りして少しだけ足に当たったボールが後ろにこぼれ、詰めていた見木が丁寧に流し込んだ。
「あとで(金沢まで)帯同していなかった選手にも言われましたよ、ナイスアシストって(笑)。ゴールにつながったから良かったけど、むしろいじってもらえてよかったですよ。あれで何もなかったら逆に恥ずかしい!」
続く東京ヴェルディ戦ではベンチスタートで85分から出場したが、わずか及ばず1-2の黒星。再開後にホームで3連敗しているのが悔やまれるが、連戦だから下を向いている時間はもったいない。
「チーム全体として守備的なところ求められています。スタンダードなところですね。その中で、自分が右に入ったらタイミング良く中に入って起点を作れると思いますし、他の選手にないような自分のプレーを出せればと思っています」
「守ることはもちろん大事ですが、そこに変化を加えていく必要はあるかもしれません」
チームが次のステップに進んでいくとき、矢田の左足が何かを起こすかもしれない。