上写真=目指すサッカーの完成を目指して、永井監督は選手を信じていく(写真◎J.LEAGUE)
変な安心感はない
交代枠が従来の3人から5人へ。ハーフタイムを除いて3回、交代の機会が許される。この新しいルールは、カードを切る監督にとっては非常に重要な意味を持つ。実際に東京Vが後半アディショナルタイムに獲得したPKは、後半から入ったFW山下諒也が相手に倒されたもの。それを決めたのも、同じく後半から投入されてキャプテンマークを巻いたMF藤本寛也だった。
永井監督は「そんなに難しさは感じなかったですよ。より考える選択肢ができて悩みは増えましたけど、難しさは感じませんでした」と振り返る。これまでも大胆かつ繊細な交代策で流れを変えてきた策士にとっては、5つの交代枠を効果的に操るのもお手のものなのかもしれない。
一方で、降格のないシーズンについては、まだ2節を消化しただけで順位が現実的なものとして浮上してきていないこともあるのか、フラットな向き合い方をしている印象だ。ただし、プロとしての強烈な矜持は隠さない。
「勝負の世界なので、降格がなくなったからといって自分を含めて安心感はないですし、一戦一戦、1分1秒の重みが変わることはありません」
「意識の中では普段と同じというか、降格も昇格もあるのと何ひとつ変わりません。昇格できる可能性がある以上、そこを目指してやっていくというだけですね。変な安心感は、自分もそうだし選手からも感じません」
なぜボールを持つのか
永井監督のスタイルはとても魅惑的なものとして多くのファンを楽しませている。一言で「つなぐサッカー」と表現されがちだが、見てくれる人に改めてその真意を解説する。
「なぜボールを持つのか、なぜ支配するのか、どうしてボール保持率を上げたいのか、パス本数を上げたいのか。それはすべて、確率よく勝ちたいからです。自己満足でやっているわけではないし、確率よく勝つための方法論としてこのサッカーを完成させたいんです」
強い信念が、ある。
「選手が中断期間の中でより理解してくれたおかげもあって、(町田戦では)よくやってくれたと思います。ただやっぱり、選手には毎日伝えていますが、我々がパスをつなぐ、ボールを保持する意味はゴールからの逆算です。点を取るところから考えています。だから、最後の崩しの部分がもっとうまくいくと、満足度は高まります。でも、選手はよくやっています。手応えは徳島戦よりも感じています」
「大前提として長い間ボールを持って支配すれば、相手の攻撃も減るでしょう。その意味でも我々が長くボールを持つのは大事なところです」
「攻撃は最大の防御、ではないですけど、ボールを持って支配している限り、相手の攻めの回数を減らすことができます。さらに質と精度を高めて、ボールを保持する意味を証明していきたい。自分もそう思っているし、選手もそう思ってピッチに立ってくれています」
選手とともに歩む長い旅路。超連戦のシーズンだからこそパワーを凝縮させて、このサッカーを完成させられるのではないかという期待は高まる。