■2018年5月27日 J2リーグ第16節
水戸 0-2 福岡
得点者:(福)ドゥドゥ、鈴木惇

※福岡のGK圍はハイボールに対して抜群の安定感を見せ、水戸の攻撃をシャットアウト。 写真:J.LEAGUE PHOTOS

福岡は前半、「今シーズンで最悪の出来」と井原正巳監督が振り返ったように、ホームで攻勢に出る水戸に多くのチャンスを作られた。それでも後半、「失点をゼロに抑えつつ、自分たちの時間を待っていた」(井原監督)と、54分に左サイドで攻め込み、ドゥドゥがゴールネットを揺らして先制。さらに5分後には鈴木が直接FKを決めて追加点を奪い、敵地で勝ち点3を手に入れた。

J1出場数ゼロの苦労人

立ち上がりから水戸の攻勢が続くなか、ゴールに鍵をかけたのは身長190センチの大型GKだった。

「今日はやばかったですね。1点でも(先に)取られたら、ぼこぼこにされてもおかしくないようなゲームだったと思います。みんなの慌て具合も普通じゃなかった」と、福岡のGK圍(かこい)謙太朗は、最後尾でチームの異常事態を感じていた。それでも、「そういうときだからこそ、後ろの選手が大事。最後のところでやられなければ、いつかは流れが来ると思った」と、水戸の選手が放つシュートを黙々と止め続け、勝利を呼び込んだ。

圍のプロキャリアは、決して順風満帆ではなかった。2014年にFC東京に加入し、昨季はC大阪に在籍。AFCチャンピオンズリーグやルヴァンカップに出場した経験はあるものの、プロ5年目ながら、これまでJ1のピッチに立てていない。いわば苦労人だ。

昨季はC大阪U-23のGKとして、J3で9試合に出場。この日の対戦相手である水戸のFW岸本武流とは、桜色のユニフォームでともに戦った。「武流もたぶん『ここで頑張らないと』っていう立場にいると思う。似たような境遇」と、後輩の今季に懸ける思いをくみつつも、今季そろってJ2デビューを果たした相手に「今日勝てたのは大きい」と、素直に喜びを口にした。

今季から活躍の場を求める福岡では、誕生日前日の4月22日、千葉戦(○3-1)で移籍後初先発となった。そこから6試合連続スタメン。27歳を迎えて、元来の持ち味であるハイボールへの対応にも安定感が増している。「それ(ハイボールへの対処)をしっかりやらないと、僕が出ている意味はない。自信がついているというよりは、もともと自分の仕事だという責任を持ってやっている。ハイボールの処理で安定感を出せば、周りも『圍がいるから大丈夫。(クロスを)上げさせれば、あいつがキャッチしてくれるからピンチにならないよ」と思ってもらえる。そうすれば、信頼関係ができて自分の地位を確立できる」と、語気を強める。

圍にとっては、初めて挑むJ2リーグ。「会場の雰囲気なども含めて、こんなにアウェーって難しいんだ、と試合に出はじめて思った。それに『こういう選手がいるんだ』とか、『こういう考えを持ちながらやっているんだ』とか、もともと抱いていたイメージと違う部分もあった。いろいろ感じる部分を出したらキリがないくらい、頭を使ってプレーしている」と、毎試合において試行錯誤を繰り返している。

それでも、胸には新天地での希望を抱く。
「いろいろ積み重ねて、チームのみんなと一緒にJ1に上がりたい」

まだ見ぬJ1のピッチでの景色を求めて、遅咲きの守護神が最後方から福岡を牽引する。

 
取材◎小林康幸
 


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