上写真=相馬直樹監督は準備の時間が少ない中でも大胆な変革を印象づけた(写真◎J.LEAGUE)
「前へのベクトルを」
10月5日、城福浩監督との契約を解除。
10月7日、森下仁志コーチの指揮のもとでガイナーレ鳥取と天皇杯3回戦で対戦。0-0からPK戦4-3で辛くもラウンド16へ進出。
10月8日、相馬直樹監督の就任を発表。
10月11日、J1第9節でサンフレッチェ広島と対戦。
東京ヴェルディにとって激動の日だった。
その広島戦、就任からわずか2日の準備で臨んだ相馬監督は、これまでの3バックが基本の戦い方から4バックのシステムに変更するテコ入れを敢行している。
左サイドバックに起用されたのは、ウイングバックの経験はあるものの攻撃的なプレーが持ち味の新井悠太で、センターの左には今季初スタメンとなった若い佐古真礼が入った。右センターバックには、かつて鹿島アントラーズで相馬監督の指揮を受けたこともある林尚輝がキャプテンマークを付けて入り、右サイドバックには本来センターバックの鈴木海音。新井を高い位置でプレーさせながら、全体が左にスライドすれば3バックにもなる並びだ。
中盤は中央に柴戸海と齋藤功佑が並び、右サイドに先月ヨーロッパから帰国した藤本寛也、左に福田湧矢、前線は染野唯月とキム・ヒョンウの2トップで、4-4-2がベースとなる布陣となった。柴戸、藤本、キムの4人を今季初めて先発に抜擢する采配となった。
システム変更とこれまでとは異なる選手の起用。相馬監督が明かした大胆な変化の理由は「前へのベクトルをしっかり作りたい。表現したかった」。もちろんわずかな準備期間で手探りの部分が大きかったことも認めていた。
それでも、選手たちの危機感と前向きな姿勢も相まって前半はペースを握る時間帯も多く、チャンスも作り出している。なかでも左サイドバックの新井のスピードを生かした攻め上がりと、藤本の広い視野から緩急の妙を得た配球で両サイドから効果的な攻撃が生まれたのは新しい収穫だ。
24分には新井の左からのクロスに染野がジャストのタイミングでヘディングシュートを放ったが、GK大迫敬介の正面を突いた。28分には藤本のパスからキム・ヒョンウが抜け出してシュートを放つなど、広島ゴールに迫った。それでもゴールに結びつかず、前半は0-0で終えている。
広島のバルトシュ・ガウル監督はハーフタイムに3人を代える思い切った策に出る。相馬監督の大胆な策が、前半の展開によって危機感を与えた証拠だろう。
ただ、ガウル監督の采配がずばりと当たるのだ。後半に入ったうちの1人の松本泰志が、その直後の47分、鮮やかなミドルシュートを決めてみせる。左サイド、ペナルティーエリア外からカーブをかけたボールが右上隅に飛び込む美しいゴール。名手GKマテウスも防ぎようのないショットだった。
東京Vの守備陣は動揺したのか、58分にも鈴木章斗に決められて2点のビハインドを負うことになった。残り時間はまだ十分にあったが、ここから巻き返す力はなく、逆に余裕を持った広島にボールを支配されて0-2のままタイムアップを迎えた。
ディフェンスリーダーの林は迷いを明かす。
「広島は後半に質の高い選手が出てきて、立ち位置も変えてきて、それに対してアジャストできなかった。判断が難しかった」
後半開始からわずかな時間で早々に2点を食らって、悪い流れを止めきれなかったことを悔やんだ。「前半のチャンスに決め切れないと厳しい」とも指摘して、良い内容を結果につなげられなかったことを反省点とした。
相馬監督も同様だ。
「全体として前へのベクトルを持ち、その中でチャレンジしていく。うまくいかないこともあるだろうけれども、しっかりと前で奪い返すことができるように。それができた前半と、やっぱりできなかった後半ということだったとは思っています」
2人の言葉と試合展開から察せられる通り、新体制の東京Vは監督交代の効果と力不足の両面を見せて90分を終えた。まだ1試合のことで、効果のあった部分をさらに伸ばし、足りない面を補っていくことができればチームを立て直すこともできるはず。少なくともその可能性は示した。攻撃の面ではチームの中心である森田晃樹が復帰できれば、さらに改善する可能性も感じられる。
ただしこの日の敗戦で、順位は最下位に沈んだ。この現実とも向き合わなければならない。
文◎国吉好弘
