上写真=川辺駿の試合を読むセンスが広島の好調を下支えしている(写真◎J.LEAGUE)
■2026年8月15日 明治安田J1第2節(観衆48,707人@埼玉ス)
浦和 1-4 広島
得点:(浦)オウンゴール
(広)鈴木章斗2、塩谷 司、セバスティアン・アレー
「いろいろな選手の質がゴールに」
サンフレッチェ広島のボランチ、川辺駿は「出ていく」ことと「出ていかない」ことにおいて、とてもレベルの高い選択ができるJリーグ屈指のプレーヤーである。
「出ていくこと」のセンスの高さは、先制ゴールのシーンで証明してみせた。
16分、自陣から佐々木翔のパスをきっかけに見事なビルドアップ、1トップのセバスティアン・アレーが下がって受けに入ったことで、前線がぽっかり空いたのを見逃さなかった。
アレーが右外の中野就斗に振った瞬間にその前のオープンスペースへラン、中野からのパスを引き受けると中央に首を振ってから絶妙の高さとスピードのクロスをファーへ送り、入り込んできた鈴木章斗に合わせてみせた。
「チームとしてクロスの質にはこだわっていましたし、ああいう形は練習していました。流れも良かったし、自分が(スペースに)出て、その先のクオリティーも重要でした。最後は章斗がうまく決めてくれましたね」
広島はサイドのトライアングルが面白いようにきれいにローテーションしていった。右はアウトサイドの中野、ボランチの川辺、シャドーの加藤陸次樹が、左ではアウトサイドの東俊希、ボランチの中島洋太朗、シャドーの鈴木章斗が、くるくると回るように、かつバランスよく立ち位置を変えた。そこに、3バックの一角、右は塩谷司、左は佐々木翔が絡んでいく。守るほうは混乱する。
その「くるくる」の中で川辺は、迷いなく前線へと追い越していくアクションに自信を持っている。
「個人的にその良さは出ていたと思います。回数はそれほど多くなくてもいいと思うんです。必要なのは質。今日に限っては、前に出た先で中野からもいいボールが来ましたし、自分もいいところが見えてワンタッチで出せたし、そういういろいろな選手の質がゴールにつながったかな」
でも、それだけなら並の選手。逆に「出ていかないこと」の選択も秀逸だ。
「開幕戦を見ても、浦和はガンガン前から(プレッシャーに)来ると思っていました。こちらも強度で対抗するけれど、でも、自分たちはそれだけじゃないスタイルもあるんです」
浦和は曺貴裁監督が就任して習得しようと務めるハイプレッシャーを仕掛けてきたが、その分、足が止まるのも早かった。
「時間が経つにつれて今日はコントロールすることが重要だったと思っていますし、(浦和が)バランスを崩して前に出てきてくれたのでその裏を狙ったり、セカンドボールを拾って自分たちがつなぐ時間も前半から多く出せたと思います」
浦和のスタイルに対抗するために川辺が選んだのが「出ていかないこと」だった。低い位置でボールを受けて浦和のプレスの矢印を自分に向けさせておいて、軽快にさばいてするりとかわす。
「出ていくばかりだと自分もきついし、チームのバランスもきつい。タイミングを見て出られればいいし、自分が出ていかなくても、自分や(中島)洋太朗がいいポジションを取れば前にスペースを空けることができると理解しています」
自分が前に出て相手の陣形を崩すこともできるし、出ていかずに低い位置で相手をいなすことでもその裏側のスペースを攻略することができる。
だから、「出ていかない」のは「出ていく」ためでもある。
「自分が後ろでいなすというよりは、前にスペースを空けるために自分が足元で受けるんです。前のスペースを使うのが自分だけではなくても。下がった位置で周りをサポートするのもいいことですし、自分も前向きでサポートできますから」
3列目で受けて、相手の目線を向けさせておいて、いなして、できたスペースに自分が、もしくは仲間が飛び込んでいく。面白いように浦和を振り回した広島の美しいコンビネーションは、そんな川辺のセンスが導き出している。
2015年以来のJリーグ制覇を勝ち取るには、それを続けていくことが必要だ。
「どこが相手であっても、鹿島と神戸とか、そういう強い相手にもやり続けることも大事。自分たちが変えすぎないことがすごく重要になってくる」
自分たちが自分たちのままであること。そのスタイルの中心に川辺駿がいる。
