上写真=佐藤龍之介が2つのゴールを生み出して4連勝&暫定首位!(写真◎J.LEAGUE)
■2026年5月2日 J1百年構想リーグ第14節(観衆:33,991人@味スタ)
FC東京 2-0 川崎F
得点:(F)佐藤恵允、野澤零温
「確信を持って差しました」
FC東京が川崎フロンターレに2-0で勝利を収めた「多摩川クラシコ」。佐藤龍之介にとっては「めっちゃ楽しかった」90分になった。
この日のどちらのゴールにも、その才能が生かされた。41分の先制点の場面では、フィニッシュの正確性と力強さ。
佐藤恵允が相手の横パスをかっさらってドリブルで突き進むと、その左に並走してパスを引き出した。ボールを左に少しずらして素早く左足で低くて重たいシュートを放つと、GK山口瑠伊は弾くことしかできなかった。こぼれ球を佐藤恵がゴールへと送り込んで、試合を動かした。
57分には追加点。今度は鮮やかなパスで攻撃のスピードアップのスイッチを押した。
ボランチのラインまで下がって稲村隼翔から預かると、そのまま最終ライン近くまで戻りながら運んでいって完全にフリーに。前を見た瞬間、半身のまま右足で鋭い縦パスを差し込んだ。これが相手のボランチの間を真っ二つに割り、待ち構えていた佐藤恵がターンして前に進んでから右へ。受けた仲川輝人がゴールに向かったところでこぼれたボールを野澤零温が蹴り込んだ。
FWの選手が最終ラインまで下がって放った鮮やかな縦パスに、スタンドは沸いた。
「自分がフリーで持てればああいったところは見えてきますし、恵允くんもいい場所に入ってきたので、確信を持って差しました」
本人はこともなげに振り返る。
「スカウティングによってあのポジションに入っていくことはチームの狙いでもあって、それをやった方が相手が嫌がると思ってやったら、結構よかったです」
このプレーが示すように「FW佐藤龍之介」が自由に、でもわがままではなく論理的で繊細にポジションを見つけることで、FC東京の攻撃がカラフルになっていった。
長倉幹樹が負傷で欠場してから2トップが定まらなかったが、4月5日のFC町田ゼルビア戦からは佐藤龍がこのポジションに入って、これで5試合連続。
松橋力蔵監督はなぜ佐藤龍をFWで起用しているのか。
「まずは攻撃のタクトを振るうことです。中央で360度の世界をしっかりと見ながら、ボランチとの関係、ツートップでの関係、ウイングとの関係を、状況に応じてどのように自分が参加していくかというところです」
左サイドハーフでプレーしたときと比べて、視野が一気に解き放たれたというわけだ。それがきっかけで、周囲との関係性に深みが出てきたという。
「ツートップをやり始めた最初の頃は、サイドから中に入っていく景色を見ていたので、中央でのボランチとの関係やタイミングはつかみかけている段階ではありましたが、なかなか良い流れにはなり切らなかった部分がありました。そういった経験をしたなかで、彼はいまどんどん良い景色を生み出してくれていますし、周りとの関係性もしっかり持てているところを見ると、彼の能力の高さやアイディアの豊富さ、状況に応じた順応が的確に出ていると思います。能力だけに限らず、周りとの関係性を生かしてやってくれていますし、それによってチームをリードしてくれていると感じています」
佐藤龍も同じ感触だ。「最初からできるというか、分かっていた」とそもそもFWでのプレーに自信はあって、時間を重ねるにつれて「それが自分も周りの選手もよく合ってきました」と周囲とのつながりが深まるのを感じていた。
「でも、龍之介の力を借りなくても」
この日の2点はどちらも佐藤恵とのホットラインがもたらしたが、特に2点目のきっかけになる縦パスの瞬間に「目が合った」と、佐藤恵が明かす。
「龍が中にいることによって、狭いスペースでボールを受けることができて、プレスを打開することができるという利点が一つ。そして、もし相手が龍についていくのであればスペースが空く。龍がいるだけでスペースが空くので、そこにどんどん人が入り込んで受ければ、今度は龍が空く。龍は縦横無尽に動くから相手もつききれないし、相手のボランチとサイドバックの間にスペースが空いてそこにフォワードが下りてくれば、センターバックがついてきて、背後を取れる。そういう連動性が生まれるかな」
佐藤龍が混乱をもたらして、川崎Fの守備に何度も穴を開けていった。
FWである佐藤龍がポジションを下げることによってズレを生み出す一方で、異なる視点で語るのはボランチの常盤亨太だ。
「川崎は(常盤と高宇洋の)ボランチにもタイトに来ていたので、龍之介がボランチの方に下りることで真ん中で3対2にできて、そこで安定してもう一つ前に入っていくために、龍之介を少し下ろすところがありました。でも、龍之介の力を借りなくても、ツーボランチで前進できればいい。今日はうまくいったけれど、本当は龍之介を使わないで前線で仕事をさせたいと思っています」
佐藤龍の能力に感謝しつつ、本当はもっとゴールに近い位置でその才能を発揮してもらう必要があるわけで、さらにチームのレベルを上げていくにはボランチだけで解消できなければならない、という自戒である。
それは、佐藤龍自身にもある。2つのゴールを生み出して「トータルで見たらチャンスに絡めたから良かった」としたものの、1点目につながるシュートも、それ以外の場面でも、仕留めるチャンスは何度もあった。
「決められたシーンも何個かあったので、それを決めていく選手になりたいです」
こうしてFC東京は「FW佐藤龍之介」という一つの解を手にすることができた。佐藤龍が目標とするワールドカップも近づくいま、マルセロ・ヒアンも好調を続けていて、この日の先発だった仲川輝人やルーキーの尾谷ディヴァインチネドゥに加えて、長倉も復帰間近とみられていて、さらに選手層が厚みを増す。
健全で激しい競争原理がもたらす攻撃のバリエーションは、まだまだ増えそうだ。
