明治安田J1百年構想リーグ第2節で、FC東京は2月14日に浦和レッズと対戦して1-1からPK5-3で2試合連続PK戦勝利を手にした。その90分で新たなリーダーとして存在感を示したのが常盤享太。プロ2年目のボランチが示した可能性とは。
上写真=常盤享太が浦和の攻撃のキーマン、渡邊凌磨にアタック。中盤でリーダーシップを示した(写真◎J.LEAGUE)
■2026年2月14日 J1百年構想リーグ第2節(観衆:32,365人@味スタ)
FC東京 1-1(5 PK 3) 浦和
得点:(F)山田楓喜
(浦)渡邊凌磨
「まねをしながら自分の形に」
FC東京のピッチの中心に、新リーダーが誕生だ。プロ2年目のボランチ、常盤享太である。
浦和レッズをホームに迎えた第2節。173センチの小柄な体にたっぷり詰まったスタミナやパワー、技術はもちろんのこと、ボールを引き取る勇気やパスを配る目を存分に示してみせた。
その上で、「声」である。
「アンカーポジションに立つならやらなければいけないし、それにプラス、やっぱリーダーシップを発揮するところは、声をかけるのが自分の特徴でもあると思うんです。チームのハイプレスのスイッチは声一つで入れられるし、リスクも声一つで管理できる。そこは自分の特徴なので意識してやってます」
例えば、マルセロ・ヒアンに対して。最前線に立つストライカーは、前線からのプレスの先鋒役としても労を惜しまずに長い距離のスプリントを何度も見せた。
「マルセロはキャンプのときからもう少しコミュニケーションが必要だなと思っていて、自分とヤンくん(高宇洋)で同じテーブルに座って、調子はどう、みたいな会話は昨年の倍以上に増えた。そういうところも(ヒアンのプレーに)よく作用してるのだったら良かったかな」
松橋力蔵監督が指揮を執って2年目のシーズン、前年と異なることの大きな一つが常盤の先発抜擢だろう。稲村隼翔や橋本健人、山田楓喜ら実力者の加入、佐藤龍之介の期限付き移籍からの復帰、長倉幹樹の完全移籍など派手な補強の話題が先行していたが、そんな彼らが勇躍するピッチのど真ん中に立って、全体をコントロールするのは、誰であろう、常盤であった。
昨年のリーグ戦では7試合、130分間のプレーに終わっていた。先発したのもフル出場を果たした8月31日の第28節、名古屋グランパス戦だけ。それが、今季は早くも開幕から2試合連続先発で、この浦和戦ではフル出場だった。
見る者を気持ちよくさせるのは、軽快なボール循環の中心になるアクションだ。受けてさばき、受け直してまたさばく。その連続性が小気味よいテンポを生んでいく。
「昨シーズンはそこがあまりうまくいかずに、試合に絡むことができなかった。そこを改善すれば試合に絡めるし、もっと出場時間を伸ばせるんだと感じていました」
課題は明白。クリアするために、キャンプからいわゆる「止める・蹴る」の基礎トレーニングを自分に課してきたという。練習は裏切らない。
「そこはヤンくんがうまいし、ほかにケントくん(橋本拳人)もケイくん(小泉慶)もケイゴさん(東慶悟)も、それに16歳だけどマキ(北原槙)もはオレよりうまいから、そのみんなから学ぶことが本当に多いチームなので、いろんな人のいいところを吸収した結果が少し出てるのかな」
同じボランチのライバルは「敵」ではなく、自らを高めてくれる「滋養」なのだ。
もう一人、「止める・蹴る」の先生だと称えたのが、長倉幹樹だった。
「もう全員が先生ですけど、でも、ちょっとなんかこの人は違うなと思うのは、長倉選手ですね。止めるだけじゃなくて次までつながるので。間でターンする感覚とか、めっちゃ映像を見て、練習だったらまねして失敗してもいいから、何度もまねして」
そうやって観察して、お手本を見つけて、まねをして、という地道なループが、先発の座を引き寄せた。
「そうやっていろんな人のまねをしながら自分の形に持っていくのが、自分に向いてるなと」
「バランスがすごくいい」
隣に立ってボランチでコンビを組む男が、その成長ぶりを最も実感しているだろう。常盤に「うまい」と頼られる高もまた、常盤の存在感を頼もしく感じている。
「あいつもいい選手で、2人のバランスがすごくいいんですよ。前節よりももっとお互いのパス交換を増やしていこうという話をして、前半の立ち上がりにそこが出て、やりやすさもありましたし、いい関係ですね。ちゃんといるべきところに顔を出してくれるので、すごくやりやすさがあります」
パスコースを作る場所や角度、タイミング次第で、いわゆる「ボールを握る」スタイルは薬にもなれば毒にもなる。高も常盤もともに頭を使って最適な空間を選び取るセンスが武器だ。その2人が並んだからこそ、掛け算で効果は高まり、ボールも循環した。
とはいえ、ゴールが生まれたのはアディショナルタイムのことで、キックオフから何度も作ったチャンスは実になっていない。常盤もそれがもどかしい。
「入りのところで相手の守備が少し緩くて、自分のところは全然プレッシャーを感じていなかったのでそこで開放して、それに開放するだけじゃなくて、ターンして前を向けたら局面が変わるのは感じていました。前半はそれが出せたんですけど、後半はもっとできたはずです。いい形でアタッキングサードまで入っていったけれど、その後が少し単調になって、1人、2人の関係で終わっていた。そこで3人目、4人目まで関わることで崩せると思うので、自分もチームとしても、もっとクオリティーが必要だったと思ってます」
開放、とは、密集でボールを受けてから裏へ、あるいは逆サイドへパスで展開していくことで、常盤は繰り返しボールに関わることでその役割を担った。だが、「その次」が足りないことを、自らにもチームにも感じた。
「開幕戦は90分出られなくて、今回は絶対に90分出て、自分の存在感を示すことを、チームの勝利とともに目標にしていた。そこが達成できたことはうれしいです。けど…」
プロになってホームでは初めてのフル出場だった。だが、それは最低限。
「ピッチに立っているだけじゃなくて、そこで違いを生み出すまでいかないと意味がない。90分できたところである一定の評価はできますけど、もっとできると思っています」
その「もっと」を1週間後の多摩川クラシコ、川崎フロンターレ戦で見せるつもりだ。
