FC東京が守備の整備に成功して、勝ち点3を手にした。11月9日の明治安田J1リーグ第36節で、攻めあぐねながらも守備に集中し、87分に安斎颯馬が決めた決勝ゴールで逃げ切った。松橋力蔵監督、アレクサンダー・ショルツ、森重真人、長友佑都が口を揃えたのは、守備への手応えだった。

上写真=アレクサンダー・ショルツが相馬勇紀を厳しくチェック。守備の高まりが勝利をもたらした(写真◎J.LEAGUE)

■2025年11月9日 J1第36節(観衆:46,838人@国立)
町田 0-1 FC東京
得点:(F)安斎颯馬

「全員がサボらずに戦える」

 0-0のまま進んだ82分だった。

 FC町田ゼルビアはGK谷晃生が最前線までロングキック。オ・セフンがヘッドで競り勝ち、落としたボールを相馬勇紀がつなぎ、増山朝陽が強烈なミドルシュートを放った。

 そこに体を投げ出したのは、FC東京のセンターバック、アレクサンダー・ショルツである。

「最初に自分がデュエルで負けてしまったところを森重(真人)選手がカバーしてくれたんですが、空いてるスペースを見つけたので、自分はもうボールを見ずにスペースを埋めることだけを考えて走ったんです。スライディングタックルはラッキーでボールに触れたり、アンラッキーで触れなかったりしますが、今回はラッキーだったと思います」

 オ・セフンと競り合って負けてしまうのだが、体勢を崩しながらもすぐに足を動かして、思い切り伸ばした左足でブロックした。

 ロングボールとフィジカルで押し込んでくる町田に対する好守の典型例だが、この5分後に安斎颯馬がカウンターから仕留めて1-0で勝利を収めたのだから、守備でリズムをつかんだと言ってもいいだろう。

 そもそもこの試合は、キックオフから我慢の時間が続いた。相手の攻撃にさらされる我慢、というよりは、こちらの攻撃がままならずに自陣から出ていけないことへの我慢、と言ったほうがいいかもしれない。

 ここ4試合はクリーンシートが2試合で、残りの2試合も失点は1ずつ。前節までのクロスからの失点は12とセレッソ大阪と並んでリーグで最も多く、その改善のために守備の整備に時間をかけてきた成果が表れている。松橋力蔵監督が明かす。

「時崎(悠)コーチを中心に守備のセッションを本当に数多くこの期間の中で繰り返し繰り返し重ねてやってきました。その成果がしっかり出せているという部分が、この勝利に結びついていることは間違いない」

 センターバックでショルツとコンビを組む森重は、「熟成」を実感している。

「試合に勝つところから逆算したゲーム展開、ゲーム運びは、ここ数試合でできるようになっていました」

「相手の出方を見ながらどういう戦い方をするのか。それを選択しながらここ数試合はできていたので、今日も我慢する時間が多くても、我慢して耐えてればチャンスは来ると思っていましたし、みんな落ち着いて戦えたと思います」

 こちらのやりたいことばかりを優先するのではなく、相手の出方を見ながら柔軟に戦い方を変えていく。成熟したチームが手にすることのできる戦術的な深みを身に着けた自信が口から出てくる。

 右サイドバックの長友佑都も同じ感覚を言葉にする。

「いまはキーパーやディフェンスラインの4枚も、押し込まれても最後のところでやられないという強さと経験値があります。これまではそこでぽろっとやられて負ける試合が多かったけれど、最近は堅さを見せることができている。そこがチームの強みになってるんじゃないかな」

 そしてショルツは、その経験をさらに高める心の強さにも胸を張る。

「我々は全員で戦うことができて、いいスピリットを持ったチームだと思います。全員がサボらずに戦えるから、こういった展開でも落ち着いてプレーできたと思います」

 というわけで、FC東京は、とても真面目に守ることでチャンスを引き寄せるチームへと成熟を遂げている。


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