上写真=植中朝日が一瞬のスキを逃さずに鮮やかに蹴り込んだ(写真◎J.LEAGUE)
■2025年10月25日 J1第35節(観衆:27,356人@日産ス)
横浜FM 3-0 広島
得点:(横)植中朝日、天野純、ジェイソン・キニョーネス
「ちょっとこれはきつすぎますよ」
チームを勢いに乗せる先制ゴールは、自分だけの手柄ではない。
12分、喜田拓也からの縦パスを受けた植中朝日は、ペナルティーリアのライン上あたりから右足を振って、左ポストに当てながらもねじ込んだ。
「プレッシャーをかけた上で自分たちのボールにできて、自分があそこで打ちましたけど、井上(健太)選手が追い越す動きをしてくれたことによって、相手がちょっと下がったんです。いろんな選手が関わったゴールだと思います」
ロングキックで押し込んだあと、プレッシャーに出たところでサンフレッチェ広島のGKの大迫敬介が縦に鋭く渡そうとしたパスが、喜田拓也のもとへ。
「(大迫が)蹴ったときに、もしかしたらこの軌道だったらマイボールになるんじゃないかと思って、(相手のディファンス)ラインを気にしながら、ワンタッチでボールが来て、(井上の)追い越しもあったりしてシュートだと判断しました」
最初はパスを出すつもりだった。
「井上選手が走っていたので出そうかなと思ったんですけど、そこで相手がちょっと早く(スピード)ダウンしたので、そこでもう打ってやろうって」
相手を見て瞬時に判断を変えた。
「自分でもよく打ったなと思いますけど、自分がそう思うということは、相手も予想していなかったかもしれないですし、やっぱり大迫選手から決めることができたのも自信になりました」
敵をだますにはまず味方から、とはよく言われることだが、自分自身もだますような判断ができた。
そして、シュートの技術が何より素晴らしかった。大振りにならないように鋭く振って、ボールをミートした。
「ああいうシーンのシュート練習はしないですけど、多少遠いエリアからでも自分は打てると思っているので」
これが前半でチームの唯一のシュートだった。それを決めきった。
「相手は堅いチームだと分析していたので、シュートは1本でしたけど、それで1-0ならこちらとしては理想的な展開。相手はACLの権利や優勝を争うようなチームなので、焦るのは向こうだと思っていました。そういう意味も含めて、先制点を自分が取れたのはチームにいい影響を与えたと思うので、すごくうれしいです」
ここから広島に主導権を握られ、ボールを追いかけ回すような展開に持ち込まれた。だが、落ち着いて我慢しながら戦えたのは、植中のゴールが心理的な優位性をもたらしたからだ。
ただ、こちらが奪ったボールは早く前に送り届けるから、前線の選手はそこに向かって走らなければならないし、相手に奪われたらすぐに守備に切り替えなければならない。攻めて守って、心身ともにスタミナを次々に削られていくようなタフな展開になった。
「自分たちがもうやるしかないっていうのは(谷村海那と)2人で話しています。ただ、前半が終わったときはさすがにきついな、と話をして、スタッフにも伝えたんです。ちょっとこれはきつすぎますよって。でも、違う(守備の)はめ方も用意してくれていました。そういうことをスタッフにもちゃんと伝えることができているので、チームとしてのまとまりはいいと思います」
ネガティブな内容だとしても、正確な情報を伝えてチームで共有することで、解決への可能性は高まっていく。しんどいことをしんどいと言えるそんな正しい空気感が、残留を求めるチームに生まれている。
植中はこれで2戦連発。残り3試合でも、残留のために当然狙っていく。
ただし、「でも」と続ける。
「残留はもちろん大事なことですけど、上も迫ってるので、一つでも上の順位でフィニッシュできるように自分たちがやるだけだと思っています。下じゃなく上を見てやりたい。あとは優勝争いをかき回してやろうかなと」
