上写真=天野純がPKを決めて雄叫び! 1ゴール1アシストで勝利の立役者に(写真◎J.LEAGUE)
■2025年10月25日 J1第35節(観衆:27,356人@日産ス)
横浜FM 3-0 広島
得点:(横)植中朝日、天野純、ジェイソン・キニョーネス
「時代は流れていく」
天野純が「最初の5分」で大きな大きな仕事をやってのけた。
78分にジョルディ・クルークスに代わってピッチに飛び出すと、その5分後のことだ。ペナルティーエリア右角付近でパスを受け、ボールを立ち足の後ろに通すテクニックを見せてターンするところで田中聡に足をかけられて、PKを獲得したのだ。
狙い通りだった。
「PKを取ったシーンに関しては、誘った感じはあるし、しっかり足が引っかかってたのでファウルだと確信していました」
自分で蹴ると仲間に宣言し、自慢の左足でゴール右下にずばりと差し込んだ。
「ちょっと芝生が深かったので、滑るかもと不安があって、思いきりは打てなかったんです」と明かすが、あのコースにあの強さで蹴り込むことは「もう決めていました」と迷いはなかった。日本代表GK大迫敬介にコースを読まれたものの、スピードに乗ったボールは触られることもなくゴールネットを揺らした。「PKはそんなに得意じゃないんで、決まってよかったです」と安堵の笑みを浮かべた。
これで終わらなかった。2-0とするこの重要なゴールを決めたあと、90+1分にはアシストだ。右CKを中央に送り、ジェイソン・キニョーネスの頭にピタリと合わせて、ダメ押しゴールを導いた。
実はPKのシーンではキニョーネスも蹴りたいそぶりを見せていたのだが、天野が意志を貫いた。だから、このアシストが「返礼」になった。
「ジェイソンがPKを蹴りたそうな顔をしてましたけど、オレがいく、って決めました。そういった中で、ギブアンドテイクじゃないですけど、彼にアシストできてよかったなと思ってます」
こうして、残留へ向けて大きな勝ち点3をその左足による1ゴール1アシストでもたらした。
ただ、ここまでの自身のパフォーマンスに納得できていない。29試合に出場しているものの、先発はおよそ3分の1となる10試合。チームは残留争いに巻き込まれ、天野自身もゴールは2、アシストは1と苦しんだ。
「個人的には今シーズンを通してあまりチームの力になれていないと痛感していますし、このチームを引っ張っていかないといけない年齢で、この立場で、本当に不甲斐ないと個人的には思っていました。そういった中で、しっかり自分に矢印を向けたことで、こういう結果を得られたと感じています」
残りは3試合で、次節にも残留を確定できる状況になった。
「もう後がないというか、個人個人のサッカー人生もかかってると思いますし、そういった中でしっかりと一人ひとりが危機感を持ってやれているところがいまは本当にいい。コーチングスタッフも分かりやすいものを提示してくれていて、本来の自分たちの姿ではないとは思いますけど、これも新しい姿じゃないですけど、時代は流れていくので、そこに合わせられていると思います」
残留のために、旗印だった「アタッキングフットボール」を一度、封印した。相手陣内に長いボールを蹴り込んで押し込んでいく、いわば「キック・アンド・ラッシュ」にも似た戦い方に集中した。その結果、前節の浦和レッズ戦では4-0、この広島戦は3-0。大量得点に無失点と、結果が出ている。
「でも、ここで安心していたら足をすくわれると思うし、もう1回、準備の期間があるので、しっかりやっていきたい」
ネジを締め直すのも、34歳の経験豊富な男の大切な役目である。
