上写真=遠野大弥が左足を振る。この日の横浜FMはシュート5本に終わった(写真◎J.LEAGUE)
■2025年4月5日 J1第9節(観衆24,170人/@日産ス)
横浜FM 0-0 東京V
「追い求めるしかない」
「まずは圧倒的に得点が足りないので」
横浜F・マリノスのキャプテン、喜田拓也は静かに、でもはっきりと断じた。もちろん、不調を囲うチームの現状についてである。
前節で負傷から復帰し、この試合がJ1では今季、初めての先発となった。途中、相手のシュートが顔面を直撃して座り込み心配させたが、フル出場を果たした。ボランチとして3試合ぶりの無失点に貢献した一方で、課題の攻撃でゴールという結果をもたらすことはできなかった。
「チャンスの数やそこまで運んでいく回数は足りないので…。そこは選手も分かっていますし、そこに対してのアプローチもチームとしてしていますけど、なかなか結果につながりきらないもどかしさみたいなものはあるので…」
多くのチームが8試合を消化したこの時点で18位。鹿島アントラーズとともに一度もJ2に降格したことのない名門クラブが、まさかの降格圏に沈んでいる。喜田が言うように得点はわずかに4で、横浜FCと並んでJ1で最も少ない。
この日はアンデルソン・ロペスとヤン・マテウスの両雄が体調不良と軽い負傷でベンチ外。それもあって、前線に迫力をもたらすことができなかった。
「もう解決方法としては、やり続けるしかないですし、追い求め続けるしかない。その手法はちゃんとみんなで考えながら」
喜田はそう言い切るが、では、どんなことをやり続けるべきなのか。自分たちに言い聞かせるように話すのは、天野純だ。
「やっぱりアタッキングフットボールという自分たちのコンセプトのところは、たぶん(スティーブ・ホーランド)監督自身も物足りなさを感じていると思います。少し自信を失ってしまってる部分もあると思いますけど、そこの質は絶対にある。いい選手が揃っているので、あとはその自信を試合に持ち込むことができれば」
5試合ぶりに先発出場を果たして攻撃のタクトを振るう背番号20に期待が集まったが、ゴールという形にすることができずに悔いた。
天野が言うのは攻めの意志を明確に表現することの必要性だが、遠野大弥はより具体性を持って指摘する。それはつまり、前に進め、ということ。
「ビルドアップをしようとすると、どうしてもボールを保持したくなる。でも、もうちょっとチャレンジした方がいい。僕たち前の選手は準備ができているので、細かいところでも狭いところでもつけてくれれば、攻撃のテンポや厚みはもっと出る。すぐに後ろに下げてしまうことが、やっぱりいまの課題だと僕は思ってます」
パスが通るか通らないかを推し量る瞬間、不確実さが確実さを上回ると、ボールを下げてしまう。その繰り返しが停滞を生むという後悔だ。厳しいところにももっと差し込んで勝負させてくれ、というアタッカーの叫びでもある。特にこの日は、右サイドにボールを運んで井上健太に単独突破させる攻撃ばかりが目立ち、遠野が立つ左サイドにはなかなかボールが巡ってこなかったから、なおさらだ。
「常に準備しているんです。ワンタッチパスへの準備だったり、相手を1人はがす作業だったりは準備できているので、もっともっとつけてほしい。ボランチもサイドバックもそこからつながることができていると思うので、もう下げずにどんどん前につけてほしいです」
遠野がそう訴えるのは、勝負を仕掛ける場所にボールが届くことすらままならない悩ましさから。それが、天野の言う自信喪失の元凶なのかもしれない。ならば信じるだけだ、と強調するのが、喜田の決意表明である。
「まずは自分たちがやっていることを自分たちが信じないと、周りは絶対に信じてくれない。自分たち自身が本当に先頭を切って責任を持って信じてやり抜く姿を見て初めて、ファンやサポーターや周りの人たちがマリノスを信じることにつながると思います。やらずに信じてくれっていうのはおかしな話なので、まずはそこです。うまくいかないこともありますけど、その覚悟や責任は持たないといけないと思います」
中3日で迎えるのはアウェーの川崎フロンターレ戦である。隣り合うホームタウンで、近年のJリーグの興隆をともに作り上げてきた攻撃サッカーの盟友だ。今季は同じく新監督の下で戦っているが、対称的にあちらは攻撃が好調で、1試合消化が少ない状態で3位につけている。
そんなライバルとの勝負に刺激を受けて、得点力を取り戻すことはできるか。今月末にはAFCチャンピオンズリーグエリートの準々決勝を迎えるトリコロールのチームが、大事な局面を迎えている。