上写真=山見大登はこの日は60分からの登場。小気味の良いプレーで攻撃を活性化させた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年4月5日 J1第9節(観衆24,170人/@日産ス)
横浜FM 0-0 東京V
「J1で勝ち点3を取るというのは」
75分、山見大登がら左からカットインして強烈なシュートを放つ。だが、残念ながらボールはポストをたたいて乾いた音を残した。
「あそこが入ればよかった。あそこのクオリティーをもう一つ上げなければ」
東京ヴェルディが臨んだ横浜F・マリノスとの「CLASICO」。伝統の一戦と呼ばれるこのカードはスコアレスドローに終わった。J1でこのカードが0-0で終わるのは2004年以来、わずか2度目のことである。
山見が悔やんだことはまさしく、東京Vの城福浩監督が「2つの課題」として挙げたことの一つだった。ペナルティーエリア付近での判断力と技術、そして相手を上回る選手層の厚さである。
「このチームが抱える課題はやはり、ペナルティーエリア周辺での判断ですね。もちろん技術もそうですけれども、最後で足を振り切れない。自分が打った方がいいのか、真横の選手のプレーを見逃さないのか、クロスで流れてきたボールを止めるのか、ボールが流れるのか。もう本当のギリギリのところが、勝ち点3なのか1なのか0なのかの分かれ目になると思うんですけど、ここの改善をさらにしていかないと。おおむね相手陣でサッカーをやっていて、おおむね我々がやりたいことをやっていて、と言いながら得点はゼロが続くことに楽観視はしていないです」
この日は一度、ゴールネットを揺らしたシーンがある。21分、右サイドから染野唯月がDFの頭を越して落とす絶妙のクロスを送ると、中央で木村勇大がヘッドでたたき込んだ。だが、木村の位置がオフサイドという判定だった。
「足半分だけ出ていたって言われました。これからは小さいシューズを履くようにします」
木村が悔しさを冗談で包んだのも、手応えがあったから。
「相手が久しぶりに4-4-2のシステムで、クロス対応のときに間に(マークの選手を)置きがちだというのは感じていたので、いいタイミングで要求できて、いいボールが出てきて、ドンピシャで決められましたけど、靴が大きかったんで。でも、ああいう形になったらできるんだなっていうのは自分の中でも分かったので、あと半足分のところのポジショニングにこだわって、次は同じようなクロスの場面はまたいい動き出しをして、もっと最後の数ミリにこだわりたい」
細かい部分をていねいに積み上げていくことは、城福監督も選手たちに要求したという。
「揺さぶった中でクロスの入り方についてどことどこの間に入っていくかということを整理しました。人数が我々が1人多い状況なのに、同じ相手のセンターバックとの間に2人が入っていったりとか、そういうシーンがいくつかあったんですよね。その入っていく精度というところは少し確認しました」
オフサイドになったことを除けばあのシーンは成功例になるが、それを木村も意識して動き続けた。
「どのパスの移動のタイミングで誰が出るのか、そこはシャドーが出るときと自分が移動するときのことを細かく伝えられました」
59分に染野が右からニアに低く強いボールを送り、木村が狙ったシーンなどにその工夫が見受けられる。
ピッチの真ん中でコントロールした齋藤功佑も、質の高まりを求めている。
「試合全体の感想では、守備のところはできているのでポジティブにとらえています。ただ、攻撃のところはその守備の強度を出した中での最後の質の部分がどうしても大事になってくる。自分自身もクロスのシーンで合わなかったところもありましたし、そこの精度を高めていく必要があるなと思ってます」
ゴールがなかった反省の言葉は、もう少し深く観察すれば、その一歩手前までにじり寄っているという実感があるからこそのものでもある。
この日はゲームチェンジャーとして60分に入った山見は、ベンチからは急ぎすぎているように見えていたという。
「攻撃のときにクロスを上げるのではなくて、もう1個持ち直したり、もう1回作り直して中に人数をかけることを意識した方がいいかな」
そんなピッチの中と外の視点を生かして、城福監督は解決の道筋を進む決意を口にする。
「クオリティーを上げるためにいま苦しんでいるけれど、頭の中を整理させることと、やはり技術と判断のスキルを上げないといけないと思います。J1で勝ち点3を取るというのはそういうことなんだと、彼らの成長をもっともっと促したい」