上写真=平川怜は今季初先発で存在感を示して、次節、注目の古巣対決に臨む(写真◎J.LEAGUE)
■2025年3月29日 J1第7節(観衆11,888人/@三協F柏)
柏 0-0 東京V
「衝撃的だったと思います」
「あれは、怒られていたかもしれない」
平川怜が苦笑いで振り返ったのは、76分のシーンだ。柏レイソルのカウンターを受けて追走したが、小屋松知哉が抜け出すその一瞬に足を止めた。オフサイドトラップをかけたのだ。小屋松はGK小島亨介をかわして蹴り込んだのだが、副審の旗が上がりオフサイドの判定。
チームの約束事としては「あそこはしっかりとついていかなければいけなかった場面」で、「いいプレーだとは言えない」と自戒を込める。ただ、「相手のスピードも考えて駆け引きした」と一瞬で決断し「自信はあった」と胸を張った。失点していたら大目玉を食らったかもしれないが、平川が失点の危機を救ったクールなプレーだった。
森田晃樹の負傷もあり、今季初先発。好調の柏を支える若きボランチ、熊坂光希を見張りながら、攻撃に関与していく役割が与えられた。今季移籍してきて腐心してきたのは、このチームにおける守備の基準をクリアすること。
「(前に)出ていってまた戻って、とか、横ズレもありますし、運動量はかなり求められます。そこの一歩を出すところ、動き出すところが一番重要だと思っています」
この日の走行距離は12.772km。ボランチでコンビを組んだ齋藤功佑の13.342kmに次いで、チームで2番目に多かった。
「大変ですけど、やることはすごくはっきりしていて、前の選手も後ろの選手もハードワークしてくれるからこそ、中盤でいい守備につながっていると思っています。チームのやり方とチームメイトのハードワークで、自分のところで球際を作ることができている、という印象です」
守備の成長は仲間の尽力のおかげだと、感謝の気持ちが先に立つ。
FC東京のアカデミー時代から、そのパスセンスは高く評価されてきた。鹿児島ユナイテッド、松本山雅、ロアッソ熊本、ジュビロ磐田と武者修行してきて、今季の新天地に選んだのが東京Vだった。育ったクラブとホームを同じくするライバルである。
「アカデミーの選手たちにとって自分の移籍は衝撃的だったと思います」
まさに「禁断の移籍」をそう振り返る。だが、覚悟の上だ。4月2日の次節は、緑のユニフォームを身にまとい、そのFC東京と戦う「東京ダービー」である。思いは強い。
「サッカー選手として生き残るためには、やっぱり難しい決断もしないといけないですから、そういう気持ちを見せられる試合にできたらいいと思っています」
「この勝ち点1を次の試合につなげたい気持ちがいま強いんです。楽しみにしていた試合なので、思いっきりやりたい気持ちはあります」
「本当に熱い試合になることは間違いないですし、そこに自分のそのような経緯もつながってくると思うので、盛り上がるような試合ができたらプラスだと思います」
移籍後初先発で存在価値を示した直後に、上り調子でぶつかることができるという、願ってもないめぐり合わせ。
「もう簡単に勝たせるつもりはないです」
柏とのゲームで手に入れた自信を思い切りぶつけるつもりだ。