京都サンガが初勝利だ。3月1日の明治安田J1リーグ第4節で川崎フロンターレを1-0で下して4試合目で白星を手にした。前節で終了間際に同点とされた反省をすぐさま生かすことができたのは、曺貴裁監督が選手とともに実行した「共同作業」にあった。

上写真=川崎Fのキーマン、エリソンを2人がかりでストップ。京都は最後まで集中して完封した(写真◎J.LEAGUE)

■2025年3月1日 J1第4節(観衆22,404人/@U等々力)
川崎F 0-1 京都
得点:(京)奥川雅也

「見ていて清々しい」

 京都サンガが4試合目にして手に入れた今季初白星。曺貴裁監督の喜びも、敵将である川崎フロンターレの長谷部茂利監督にこう言われれば、さらに増すのではないだろうか。

「京都のやりたいことを受けてしまった形になりました。失点の部分もミスではありますけれども、京都の良さを出させてしまったその時間はもったいなかったなと思います」

 この日、唯一のゴールは、後半開始早々の49分に生まれた。右のタッチライン際で川崎Fのボランチ、橘田健人が持ったところに川﨑颯太が寄せて内側のコースを消すと、橘田はバックパス。これが弱くなったのを見逃さなかったラファエル・エリアスが拾って中央へ送り、奥川雅也が蹴り込んでスコアを動かした。

 決めた奥川は「プレスをかけてくれたおかげであそこにボールが来たので、チーム全体に感謝したい」と全員で奪ったゴールだと強調した。

 DFラインの前で中盤の中央に立ちはだかった福岡慎平は、そのミスを誘発した自分たちの振る舞いに胸を張る。

「サイドに出されるときはあまり怖くなかったんです。フロンターレさんは本当にうまいけど、中に差し込むよりは外回しだったし、差し込まれたときは自分がつぶす判断もしていました。フロンターレさんがそこで差し込めなかったのは、自分たちが集中できていた証拠かなと思っています」

 前節のヴィッセル神戸戦では、13分に先制したもののアディショナルタイム11分に同点に追いつかれている。その痛みを中2日で今季初勝利という形に昇華できたのは、「集中」のなせるわざだった。

「今日の試合を見て、選手の勝ちたいという気持ちが100パーセント、グラウンドに落ちるのは、非常に見ていて清々しいものだと思います」

 曺貴裁監督はそう言って、選手の姿勢に拍手を送った。

「選手は理解できたと思う」

 神戸戦の一番の反省点を、曺貴裁監督は試合の締め方だと考えていた。

「失点したというよりは、終わらせ方が良くなかったということです。1点取って守りに入るのが早すぎたので、あくまでも2点目を取りに行くために、要は相手コートでプレーするためにどうしなければいけないのか、そのことが最大のリスク回避になるんだと話しました」

 まさにおあつらえ向きなシチュエーションがやって来た。先発を10人も代えてきた川崎Fは先手を取られるとすぐに動いて、57分に脇坂泰斗、家長昭博、マルシーニョを、77分に山田新を投入した。京都はどう対抗するのか。

 ハーフタイムには川﨑を送り出していて、77分にボールハントが得意な米本拓司を加えて中盤の守備を手厚くした一方で、大きな手を打つのは時計の針が90分を回るまで引っ張った。90+1分、パトリック・ウィリアムを投入して3バックへ。この「タイミング」に神戸戦の教訓が生きていた。

「3バックにするタイミングが早ければ、デジャブのように前節の試合が浮かぶのは分かっていたので、できるだけ高い位置でプレッシャーをかけることを残り2、3分までやろうという意図でした」

 神戸戦でアピアタウィア久を投入して4バックから3バックに変更したのは、78分のこと。長いアディショナルタイムも含めると、残り時間が20分を超えるタイミングでのシフトチェンジだった。これが早すぎたという反省だ。

「そういう意味では、僕が我慢した意図と3バックにした意図を選手は理解できたと思います」

 ぎりぎりまでプレーの狙いを変えなかったことで、ピッチの中でも優位性が生まれていた。福岡は、川崎Fの選手たちに焦りのようなものを見て取った。

「ああいったミスから失点してしまっていたから、相手のボランチは2人ともなかなかボールを受けたがっていないなと思っていました。(川﨑)颯太くんとヨネくん(米本)が入ったときに強くいってほしいと話していましたし」

 失点に直結するミスをしてしまった橘田は「あの場面はそこまでプレッシャーを感じていたわけではなかった。技術的なミスです」と振り返った。ただ、試合を通して難しさがあったことを認めた。

「前半の立ち上がりからも前から来てて、うまくはがせたシーンもありましたけど、圧もありました。もっとうまく、ビビらずに中で受けて外していければよかったと思います」

 こうして、監督が綿密な手を打ち、選手が実行したことで神戸戦の反省は見事に生かされた。その「共同作業」こそ、曺貴裁監督が今季初勝利の中に見出した大きな意味だ。

「試合はパスの数を争うわけでも、シュートの数を争うわけでもない。ゴールを争うスポーツですけど、そのゴールに結びつくために最善の方法は何なのか。それはロングボールだったり、中盤でボールを動かして相手のコートに入っていったり、ゴールキックをつなぐふりして蹴ったり、いろんな形がありますけれど、選手が基本的にはそのことをどう理解しているかということが監督としては非常に大事だと思っています。

 皆さんのお眼鏡に叶うようなサッカーをやっているかどうか自信はないですけども、自分たちはこのサッカーを真摯に信じて、それをやればいい、ということではなくて、磨くためにはどうしたらいいのかということを日々、選手と一緒に積み上げていくつもりです」


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