上写真=今季加入のマルセロ・ヒアンが最前線に。この日はシュート1本だった(写真◎J.LEAGUE)
■2025年2月22日 J1第2節(観衆29,545人/@味スタ)
FC東京 0-1 町田
得点:(町)西村拓真
土肥幹太がサイドバック化
FC東京は開幕戦に続いてこの日も同じ先発メンバーで組んだ3バックを採用した。横浜FCに1-0のあとにFC町田ゼルビアに0-1。ホーム開幕戦で今季初めての黒星を喫した。
ただ、森重真人が「それ以外は守備の破綻はなかった」と話した82分の失点シーンを除けば、確かに崩されてチャンスを作られた場面はほとんどなかった。もちろん、破綻は一つでも許せば負けるのがサッカーだが、一方で、得点を奪うことができなかったことはより鮮明な焦点として浮かび上がる。この日はシュート7本でノーゴール。
自分たちがボールを運ぶ局面については、森重も「ストレスなくできました。ビルドアップは問題なかった」と一定の手応えを話す。開幕戦の反省を踏まえ、攻撃にはさまざまな工夫を組み込んだ。
例えばその一つは、シャドーに入る俵積田晃太を後半に左サイドに張らせて得意のドリブルを優先できるポジションに立たせたことであり、もう一つは3バックの右に入った土肥幹太をワイドに立たせることである。
最終ラインからていねいにボールを運ぶとき、土肥がタッチラインまで広がる。ウイングバックの白井康介はさらに高い位置にポジションを取ってウイングのようになり、シャドーの仲川輝人がゴールに近い位置に入っていける。その攻め筋を選択するスイッチが土肥のポジショニングだということになる。
こうして同じシステムでがっぷり四つになりがちな町田の選手に対してポジションのズレを作りだし、森重から土肥へ、土肥から縦へ、あるいは中盤へとリンクしていくボールの動きで押し込んだ。
土肥は「軽くは言われてます」と指示を受けていると明かしたものの、「自由をもらってやらせてもらってるんで、相手の立ち位置を見ながら外せるような位置を考えながら取っています」という判断基準を示す。自分の意思とタイミングでスイッチを入れているわけだ。
高宇洋はそのメカニズムをこう表現する。
「後ろを3枚ではなくて4枚気味にして、幹太が右肩上がりになって右サイドバック的な形にして、僕か(小泉)慶くんがアンカーの位置に入りながら、オ・セフン選手がプレスに来たときに開放する場面もありました」
いわば「疑似4バック化」だが、これに限らずに攻撃に出ていくために仕込んだ工夫については、松橋力蔵監督も「準備する中で攻撃に関してはそこを強調してやりましたし、しっかりトライしてくれたところは非常に評価できます」として、黒星によってその部分の収穫を失うことはないと強調する。
ビルドアップは改善した。では、その先は……となると、誰もが言葉を発するのは、考え込むような一瞬の間を置いてから。森重は冒頭の「ビルドアップは問題なかった」にこう付け加えた。
「もう一つ前にいったときに、どこでスピードアップするのか。そこからのアイディアや速い攻撃はもうちょっと改善の余地はあるかなと。うまく押し込むところまではいってるので、あとは相手の嫌がるプレーをもっと増やして、もっと怖いプレーを、ゴール前(のパスコース)を選択していければよかった」
高も同じことを言っている。
「最初のラインを打開するところは前節に比べれば良くなっている。あとは、今日も得点が取れていないので、ゴール前に入っていく力や押し込む時間をもっと増やしていけたらなと」
松橋監督も押し込むパワーを増やしていくことを改善ポイントにする。
「中央のところに圧力をかけながらサイドを開けさせたり、サイドを手厚くして中央を薄くさせたりしていかなければ。ゴールのことを考えれば、やっぱりシュートがまず選択肢にならなきゃいけない」
最終ラインから、ピッチの中央から、ベンチからのそれぞれの視点が一致した。
最前線では体の強いマルセロ・ヒアンが先発で、64分には俊足の佐藤恵允と代えている。持ち味の異なる選手を入れ替えながら目先を変える手法も使った。あとはフィニッシュ。枠内シュートはわずかに1本だった。
「行ききっちゃうところと、もう1回やり直して嫌なところに入れていくようなところも必要だと思うので、合わせながらやっていけたら」
大胆と細心の選択をみんなで間違わないこと。高の言葉に改善への道筋が示されている。