上写真=先発フル出場を果たした齊藤未月(写真◎J.LEAGUE)
勝たせるプレーをしてこそ意味がある
「プレーできたことはすごいうれしいです。いろんな気持ちだったり、いろんなものがありましたけど、やっぱりピッチに立つ以上、結果を残さないといけないと僕個人は思っていました。チームを勝たせるプレーをしてこそピッチに立つ意味があって、価値があると思ってるので。そういう意味では、全く足りないゲームだったのかなっていうふうに思います」
4−3−3のアンカーとして先発フル出場を果たした齊藤未月は、539日ぶりに戻ってきた公式戦のピッチをそう言って振り返った。
2023年8月19日の柏戦で左膝に重傷を負った。選手生命が絶たれてもおかしくないほどの大きなケガだった。数度の手術とリハビリを経て、ナンバー5は帰ってきた。
相手ボールホルダーに積極的にアプローチする齊藤の姿に心震わしたファン・サポーターは多かったはずだ。しかし、「(ケガに対する)怖さはまったくなかったですけど、前にボールをこぼすシーンもたくさんあったので、しっかり振り返って、次は勝てるように準備したい」と当の本人は少しも満足していなかった。
スコアは0−2。チームを勝利に導けなかったことを悔やんだ。
「やっぱり今日のメンバーを見てもらっても、出ている選手がやれるかどうかって。相手はサンフレッチェでしたし、すごい力があるのはみんなわかっていました。メンバーを見ても、いいメンバーでやってくれた中でどれだけピッチで示せるかが重要だったと思う。結果が出るのがベストだったと思いますけど、それができなかったのは何かが足りないというか、足りない部分が多いのかなと個人的には思います。チームとしてもやるべきことをやれていた前半なのかどうかというのもありました。その意味でバットなゲームなのかなと」
ケガで離脱する前は主軸として活躍していた。その後、チームはJ1を連覇した。現在の齊藤の立場は、再び定位置取りに臨む選手の一人。巡ってきたチャンスで、自らの価値を示さなくてはならない。そんな強い思いがあるから、敗戦にも自身のプレーにも満足できないのだろう。
「ケガだとか、もしかしたら体調不良とか、いろんな状況がチームにあると思いますけど、出ている選手が結果を残さないといけないし、それだけのチームであり、戦力はあると思う。その意味では、やっぱり練習からもそうですけど、試合でピッチに立った時に結果を出し続けるっていうのが重要だと思います」
来週にはACLも再開し、2025シーズンも神戸はハードなスケジュールをこなす。齊藤の指摘通り、総合力を問われる1年になるだろう。求められるのは戦力の底上げであり、チーム力のさらなる向上だ。
齊藤は自らの役割として「リーダーシップを発揮すること」にも触れた。
「今日のメンバーであれば、確実に自分がリーダーシップを持って、プレーでもそうですけど、見せていかないといけない。他の選手にはない激しさが自分にはあると思っているので、それをピッチで毎試合、120パーセント出せるかどうかが重要。そこは自分の心に毎回、留めてプレーしたい」
その言葉からは覚悟と意欲が伝わってきた。考えてみれば、神戸は齊藤が不在となる中でJ1を連覇したチームだ。頼れる男が完全復活を遂げたら、それだけで大きなプラスだ。
見る側が抱きがちな感動的な復活ストーリーに対して、釘を刺すように言った。
「ピッチに立って結果を残し続けることが選手の価値だと思いますし、そこに対しての目の向け方で全然いいと思っています。それがプロサッカー選手としてあるべき姿。自分もそう思ってピッチに立ってるので。ここ(=復帰)は目標では全くないので、シーズンが終わった時にどういう活躍をして、どういう状態でチームを優勝に導けているかがすごい重要だと思う。それに向かって日々、1日1日やれることやりたいと思います」
ハードなシーズンがいよいよ本格的に開幕する。齊藤の言葉には、全てを注ぐ覚悟が宿っていた。