横浜F・マリノスは1月20日から宮崎市内でキャンプを行っている。7日目の26日にはロアッソ熊本と練習試合を行い、2−1で勝利を収めた。22日の大分トリニータ戦からどんな変化が見られたのか。新システム3-4-3を導入し、戦術の浸透を進めるスティーブ・ホーランド新体制の現在地をリポートする。

上写真=スティーブ・ホーランド監督のもと、チームは新戦術の習得に取り組んでいる(写真◎舩木渉)

右WB・井上健太「徐々に戦術にもフィットしてきている」

 横浜F・マリノスは1月26日に行われたロアッソ熊本との練習試合を2-1で制した。

 1本目と3本目に生まれたゴールはいずれも似たような形だった。1本目の22分、ヤン・マテウスとの連携で右サイドに抜け出した右ウイングバックの井上健太がクロスを上げると、相手に当たってコースが変わったボールに遠野大弥が触ってマリノスでの第1号ゴールを挙げる。

 3本目の19分には遠野に代わって出場していたエウベルがゴールネットを揺らした。こちらも右ウイングバックの宮市亮が上げたクロスにシャドーのエウベルが合わせるという流れだった。

 初の対外試合となった大分トリニータ戦ではビルドアップの局面で苦しみ、ウイングバックやシャドーの選手がゴールに近い位置でボールを触る機会をほとんど作れなかった。それから3日間で修正をかけ、大分戦と同じミラーゲームとなった熊本戦では再現性のある形で2得点。大きな進歩に、マリノスの選手たちは確かな手応えを感じている。

 遠野の1点目を演出した井上は「大分戦を踏まえて自分たちが落とし込んできたことが、チームとしてうまくできる場面がありましたし、徐々に戦術にもフィットしてきているかなと思います」と改善を実感しているようだった。

 エウベルのゴールをアシストした宮市も「チームとしてやってきた形の1つだったので、あのゴールの形はよかったと思います」と充実の表情で語る。ウイングバックからシャドーの流れでの2得点は、チームづくりが前進している証と言えるだろう。

 スティーブ・ホーランド監督は新システム3-4-3を導入し、戦術の落とし込みを進めてきた。攻撃面では3人のセンターバックとGKに、状況に応じてダブルボランチを加えた4〜6人が近い距離でパスをつなぎながら相手のプレスを引きつけ、シャドーや両ウイングバックへと展開して一気にスピードを上げるメカニズムの構築に時間を割いてきている。「トリガー」と呼ばれる攻撃のスイッチにもたくさんのパターンを用意して仕込んでいる最中だ。

 熊本戦の2得点はいずれもヤンや松村晃助といったシャドーの選手が起点となり、右ウイングバックの井上と宮市が抜け出し、最後はもう一方のシャドーに入っていた遠野とエウベルがゴールを決めるという練習通りの形だった。

 ビルドアップの確実性には改善の余地があり、まだ相手のプレスに慌てて大きく蹴り出す場面も多いためホーランド監督からポゼッション中に「落ち着け!」「辛抱強く!」と指示が飛ぶこともある。それでも実戦の中で成功体験が複数生まれたことには大きな意味がある。ゴールやビッグチャンスに結びつく確率を上げ、パターンを増やしていければ自ずと得点数も増えていくはずだ。

 指導体制がガラッと変わり、ほぼゼロからのチームづくりには困難も多いだろう。それでも大分戦、熊本戦と試合を重ねるごとに着実な成長が見られており、前進している実感は選手たちに自信をもたらしている。1月30日に予定されている宮崎キャンプ最後の練習試合、ヴァンフォーレ甲府戦でさらに進歩した攻撃が見られれば、約2週間後に控える本格的なシーズン開幕に大きく弾みをつけることができるに違いない。

文・写真◎舩木渉


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