2024年限りで現役を引退したサンフレッチェ広島の青山敏弘が、高校時代のチームメイトとともに『幻のゴール』の相手と再戦するOB戦が12月22日に行なわれた。得点こそなかったが、惜しいシュートを放つ場面も。華々しいプロキャリアの土台を築いた高校時代のユニフォーム姿で、かつての仲間たちと充実の時間を過ごした。

上写真=前半に作陽高の先制点が決まり、会心の表情を見せる青山。かつての仲間たちとの一戦を大いに楽しんでいた(写真◎石倉利英)

「自分も頑張ってきてよかったと思う」

 作陽高(現作陽学園高)と水島工高が対戦した2002年の高校選手権岡山県予選決勝で、当時作陽高2年の青山は1-1で迎えた延長前半に右サイドから豪快なミドルシュートを決めた。当時はVゴール方式が採用されており、この時点で全国大会出場が決まるはずだったが、左ポストに当たったボールがゴール内にはね返った後、右奥の支柱に当たってゴール外に出たプレーを主審が誤認して得点が認められず。作陽高はPK戦の末に敗れ、出場権を逃した。
 
 日本サッカー協会が誤審を認め、決勝の再試合や、作陽高にも出場権を与えるべきとの意見が飛び交ったが、結果は覆らなかった。青山が引退会見や引退セレモニーでも触れるなど、21年間に及んだプロキャリアの原点となった『幻のゴール』。両校は10年後の2012年にOB戦で再戦した際も1-1で引き分けており、22年後の今回、青山の引退記念も兼ねての再々戦が行なわれることになった。

 会場は作陽学園高のグラウンド、当時と同じ青木隆氏が主審を務め、25分ハーフで争われた。キャプテンマークを巻く時間帯もあった青山は、現役時代と同じように周囲に指示を出しながら的確なパスを繰り出し、1-0で迎えた後半には、GKが前に出ているとみるや約40メートルのロングシュート。惜しくも得点とはならなかったが、持ち味である視野の広さを感じさせるプレーも見せた。

 試合は1-0で作陽高が勝利し、両チームは三たびとなる10年後の対戦を約束していた。青山には水島工高から花束が贈られ、サンフレッチェでの背番号と同じ6回の胴上げも。試合は一般公開されたため、広島のユニフォーム姿の観客も多く訪れており、最後のあいさつに大きな拍手が送られていた。

 高校3年時と同じ背番号10の青山は、「自分の引退のタイミングで、みんなで集まって、生まれ故郷である岡山で現役を終えることができる。それにふさわしい試合でした。主審の青木さんにも来ていただいて、あのときの続きをやれたのは本当に幸せ。みんなの顔を見ると、自分も頑張ってきてよかったと思う」とコメント。自身のプロキャリアの土台となった高校のユニフォーム姿で「引退しましたけど、どこか吹っ切れていないところがあった。今日、これで本当の終わりだな、と。この場でみんなに見送られて、見届けてもらって終われたのが幸せです」と柔らかな表情で語った。

取材・写真◎石倉利英
 


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