上写真＝谷口栄斗が83分に同点ゴールを決めて、初のハットトリックを達成（写真◎J.LEAGUE）
■2024年11月30日 J1第37節（観衆26,387人／＠味スタ）
東京V 4-5 川崎F
得点：（東）見木友哉、谷口栄斗3
（川）山田 新3、ファンウェルメスケルケン際、マルシーニョ
「感謝してもしきれない」
東京ヴェルディのセンターバック、谷口栄斗がハットトリック。うれしいはずの人生で初めての経験にも、「意味がない」とつぶやいた。
勝てなかったからだ。
J1復帰初年度のホームラストマッチ。川崎フロンターレを相手にいきなり2点のリードを許すが、前半のうちに見木友哉が1点を返し、後半開始すぐの49分に同点とする。左CKから千田海人がヘッドで狙ったこぼれ球を蹴り込んだのは谷口だ。
またも2点をリードされたものの、71分に左からの山見大登のFKを谷口がファーでヘッドで合わせて押し込むと、83分にもCKのこぼれ球をボレーでたたき込み、ハットトリックを達成してまたもや同点にしてみせた。
こうして2度にわたって2点のビハインドを追いつく粘りを見せたのだが、90＋4分にまたも失点して力尽きた。4-5の敗戦。
「最近すごく練習していたので、結果につながってよかったですけど、勝てなかったのでそこは意味はないかな」
ゴールはいずれも練習を重ねてきたセットプレーから。1点目は「こぼれ球が来るのは予測していて、いいところにこぼれてきてくれたのでよかった」、2点目は「ジェジエウのマークが緩かったので、当てるだけでした。山見のボールもすごくよくて、チームとしての狙いがはまりました」と、トレーニングの成果を誇る。センターバックがハットトリックというのはなかなかないことだが、やはりポジション柄、5失点の無念が喜びを上回ることはない。堅守を誇ってきただけに、なおさらだ。
「守備に課題があるかなと。自分自身が チームをコントロールすることができれば、最後の失点もそうですし、立て続けに失点することはなかった」
いきなり2点を奪われたあとすかさず3バックから4バックへ変更したが、スムーズに移行して追いついた。センターバックとしての細やかな気遣いがあったからだが、それでもさらに失点を重ねた現実から目を背けることはできない。アディショナルタイムに奪われた決勝ゴールも、GKチョン・ソンリョンからのロングキックからエリソンにヘッドで流され、山田新に押し込まれた。谷口が空中戦の競り合いにもシュートブロックにも関与できない場所で起こった事象だが、それでもディフェンスリーダーとしては悔やみきれない。
ホーム最終戦には2万6387人が集まった。J1復帰初年度でホームゲームの1試合平均入場者数が2万2142人となり、1995年の2万834人を抜いてチームでは93年、94年に次ぐ3番目に多い年になった。苦難の歴史を歩んできたこのチームの大きな達成の一つだ。
「サポーターがいなければ僕たちもいないですし、感謝してもしきれない。僕たちのサッカーが初めて来てくれた人に響いてくれたんだなと感じます」
谷口にとっては「ちょっとびっくりしてます」と正直に明かした自身初のハットトリックも、敗れはしたもののスタンドを緑に染める彼らの心に響いたに違いなく、その点で「意味がない」などということはないだろう。
