上写真=劇的なゴールを決めてサポーターが陣取るゴール裏で雄叫びをあげる武藤嘉紀(写真◎小山真司)
■2024年11月30日 明治安田J1第37節(@三協F柏)
柏 1−1 神戸
得点:(柏)木下康介
(神)武藤嘉紀
試合に入りきれていない選手がいた。そういうのは本当に必要ない
開始5分に失点した神戸は、13分あった後半のアディショナルタイムも含めて、およそ100分間は追いかける立場で戦った。
90+2分に柏のジエゴがファウルを犯し、退場。同時に神戸はPKを獲得し、同点のチャンスを得た。しかし、キッカーの大迫勇也が痛恨のミス。同点の機会を逃し、首位に立つチームは絶体絶命のピンチを迎えることになった。
90+9分、右CKの場面で大迫が放ったシュートは枠に嫌われた。チーム全体が「まだ時間」があると諦めていなかったが、それでもさすがに『万事休す』と思われた。
しかし、J1残留にかける柏の気迫を、神戸の執念がわずかに上回ったか。まるまる1試合以上の時間、ゴールを目指し続けた首位チームの思いがついに実る。
100分に訪れた右CKの場面。扇原貴宏が入れたボールは一度クリアされるも、酒井高徳、大迫とつながり、広瀬陸斗がシュート。これは柏のGK松本健太にセーブされたが、こぼれ球に武藤が反応。左足を振り抜き、シュートをゴール右上に突き刺した。VARで一度はオフサイドと判定されるが、ゴールは認められた。
「このまま終わってしまうんじゃないかっていう怖さもありましたけど、やっぱりサコくん(大迫)が今までチームを救ってきてくれたこともありますし、彼の気持ちを汲んで、なんとかチームで1点取りたいという気持ちを最後まで持っていました。
自分自身やっぱりあそこで最近少し慌ててしまって、外してしまう場面が多かった。キーパーに止められてしまう場面が多かった。とにかく冷静にワンタッチ目を置くこと。正直、最初はダイレクトでいこうと思ったんですけど、急なボールで体勢も悪かったので。トラップで決まったんじゃないかなと」
土壇場での冷静な判断とプレーがチームを救う同点ゴールを生んだ。ドローに持ち込み、勝ち点1を手にしたことで神戸は自力で優勝できる資格を得た。最終節に勝てば、リーグ連覇、そして国内二冠を達成できる。
ただ、劇的な展開を呼び込んだ武藤は喜びの言葉を口にするだけで終わらなかった。チームの戦いぶりを自ら反省し、苦言も呈した。
「やっぱり甘さが出て、こういった決戦、 1番大事な試合で試合に入りきれてない選手もいましたし、そういうのは本当に必要ない。何度も言っていますけど、チームとしてやること、とにかく戦うところ、そういったところは絶対ぶらしちゃいけないと思っています」
「立ち上がりから失点して、かつ球際で勝てていない。相手は勝てば残留というのはわかっていて、難しい試合になるとわかっていたにも関わらず、やっぱりああいう試合の入りをしてしまう。それ自体がやっぱり間違いだと思いますし、僕らには必要ないこと。1人1人がもっと責任を持たなきゃいけない。
僕らは仲良しでやっているわけじゃないんで。チャンピオンになるということはそれだけ難しいこと。そういう(意識の)連鎖が最後に優勝につながると思うので」
『勝ち点を積めたからいい。首位のまま最終節を迎えられるからいい』という考えではいけない。武藤は、こうも言った。
「厳しい言い方になるかもしれないですけど、戦えない選手を置いていくっていう気持ちで、僕ら自身がやっぱり戦う姿を見せなきゃいけないなと思います」
分けても兜の緒を締める。チームに、そして自らに対しては常に厳しさを求める武藤のような選手がいるからこそ、神戸は今、首位に立ち、連覇と二冠に王手をかけているのかもしれない。
「町田もいますし、広島もいて、ここで勝ち点ゼロであることがどれだけ僕らにとって不利になるかはわかっていましたし、この勝ち点1が自力で優勝を決められる形に持ち込めたこともわかったので、そういった意味でこの1点の大きさは計り知れないものだと正直思っていました。でも最後に気を抜いて負けたら全てが水の泡。ACLもありますけど(3日、アウェーで浦項戦)、しっかりとみんなでコンディションを整えて、最後一丸となって戦い抜きたいと思っています」
運命の最終節は12月8日。神戸はホームで湘南と対戦する。