上写真=札幌が勝利をつかんだ浦和戦や鳥栖戦で重要な働きを見せた大﨑玲央(写真◎J.LEAGUE)
残り11試合で目指すは常に勝ち点3のみ
27節を終えて札幌の順位は、最下位(20位)。19位の鳥栖とは5ポイント、18位の磐田とも9ポイントの勝ち点差がある。降格圏を脱するには終盤に向けてここからハイペースで勝ち点を積んでいく必要がある。
ただ、どん底に沈んでいた5月や6月に比べれば、チーム状態が好転しているのは間違いないところだろう。その理由の一つに挙げられるのが、大崎玲央の存在だ。今夏に加入した大﨑がボランチとして初先発した22節の鹿島戦(7月6日)以降、チームは2勝2分け2敗。攻撃が連動せず無得点に終わり、守備も崩壊してなす術無く敗れるようなことはなくなった。
むろん、大﨑一人の存在でチームが劇的に変わったわけではないが、ボランチにこの新戦力が起用されると、それまで散見されたピッチ中央エリアでのプレスの空転やビルドアップの停滞といった問題点が改善されていった。3バックの真ん中で守備の要としてプレーする岡村大八は「(大﨑は)非常に技術的が高い選手ですし、コーチングをすごいしているので、後ろからも見ていても、とてもやりやすい」とポジティブな言葉でその効果を説明した。
24節の浦和戦では、とくに攻撃面の働きが目立った。大﨑本人は「たまたまで、常に狙っているわけではない」と振り返ったが、岡村の先制ゴールにつながるCKを獲得した場面では、第3列からボックス内へ走り込むプレーが効いた。
シャドーの青木亮太にボールが入った時点で左のポケットに向かって移動し、ボールを引き出すことに成功。浦和の守備陣を後手に回らせ、CKを獲得するに至った。そのCKから岡村のヘディングが生まれ、札幌は先制点を手にしている。
一時は9人いたケガ人も徐々にピッチに戻り、チームはいま、ベストの形に近づきつつある。そうしたタイミングで大崎が加わったことは、やはり大きかった。大﨑加入以降も新戦力が6人加わり、6月末の時点で紅白戦さえままならない状態だったが、現在では紅白戦に入れない選手が出るほどで、競争力が高まっている。大﨑もその点について、加入当初からの変化を感じると話していた。
前節、ともに降格圏に沈む19位鳥栖との対戦はペトロヴィッチ監督いわく「シーズンで最も重要な試合」だった。果たして、札幌は5−3で勝ちきった。この試合でもボランチで出場した大﨑は、3バックの右に入った高尾瑠に細かくポジショニングの指示を出し、高尾が上がればそのスペースを埋め、ビルドアップの局面では絶えずスペースに動いて最終ラインからボールを動かす際の出口になっていた。
本来は自分が言うだけではなく、「周りにもどんどん指示の声を出してほしい」と大﨑は言う。「一人ひとりが主体的に声を出して」双方向のコミュニケーションが活発になれば、それだけチームが強くなると考えるからだ。だから「まだまだ改善すべきことはある」と指摘し、同時に「自分ができることは全部やるというのは毎試合、意識している」と覚悟を口にする。
札幌の現状を考えれば、相手がどこであろうと勝たなければ道は開けないが、鳥栖に勝って臨む次戦の相手は18位の磐田。大﨑はきっぱり言い切った。
「磐田さんは(札幌と)同じような状況にいるチームで、でもそこを叩かないと上にはいけない。本当に勝ち点3、それだけですね。1とかじゃなく、引き分けでいいとかじゃなく、絶対3ポイントを取りにいくっていうところ。アウェーとかは関係ない。自分たちの状況の中で、本当に目指すのは勝ち点3だけ」
勝てば、今季初の連勝であり、チームにいま生まれつつある良い流れをより強く、太くすることにもつながる。道は険し。されどその道はJ1に留まるために進まざるを得ない道。
磐田戦のキックオフは25日、19時。札幌にとって、今節も極めて重要な一戦になる。