8月25日の明治安田J1リーグ第28節で、東京ヴェルディが鹿島アントラーズを下した2ゴールは、山見大登が決めてみせた。クラブJ1通算800ゴールとなった先制点は、前節の東京ダービーで悔しい思いをしたからこその1点。そこには、GKマテウスの貴重なアドバイスがあった。

上写真=2ゴールの山見大登(右)を、好守のマテウスの金言が支える最高のコンビ(写真◎J.LEAGUE)

■2024年8月25日 J1リーグ第28節(@味スタ/観衆24,814人)
東京V 2-1 鹿島
得点:(東)山見大登2
   (鹿)鈴木優磨

「チャンスが巡ってきて大事な試合だった」

 東京ヴェルディにとってJ1通算800ゴール目が、山見大登の右足から生まれた。

 63分、右センターバックの綱島悠斗がドリブルで持ち運んでくると、オフサイドにかからないようにタイミングを見てスルーパスを引き出した。次の瞬間、右足でニア上を突き破ってみせた。

 これがメモリアルゴールだというのは「知らなかった」というが、「決めて当たり前ぐらいどフリーだった」ので、その瞬間はとても冷静だった。

 75分には追加点。自陣からのFKが前線に送られてこぼれたところに鋭く反応した齋藤が左足でシュート、鹿島アントラーズのGK早川友基にセーブされたが、ダイレクトでまたも落ち着いて流し込んで、チームとして7試合ぶりのマルチゴールになった。最後にPKで1点を許したので、これが決勝点。

 東京Vは得点力不足に悩んでいた。ここ3試合はノーゴール。それこそ、山見がおよそ1カ月前、7月20日のアビスパ福岡戦の38分に決めてから、得点が生まれていなかった。山見自身もここ2試合はベンチからのスタートだったが、この日は先発に名を連ねた。

「ここ何試合かスタメンを外されていて、ここでチャンスが巡ってきて大事な試合だったので2ゴールを決めてうれしい」

 意地だった。だから、前半からチャンスを生き生きと作り続けた。31分には左から中に切り込んでから縦に短いスルーパスを送って、木村勇大の絶好機を生んでいる。45+2分には、柴崎岳のパスをカットしてから攻撃に転じ、右からの齋藤功佑のクロスを胸トラップ、逆サイドを狙ったが、これはバーを直撃した。51分にも左からカットインしてニアを狙ったものの、早川の好反応に止められた。

 そして、62分の交代策で左から右のシャドーのポジションに移ってすぐに、先制点を生んでみせた。

 こうした好リズムは、鹿島とのかみ合わせのズレを冷静に見極めた結果だった。

「こっちは5バックでやっていて、相手は4バック。自分たちのシャドーやウイングバックのところがつかみにくいと思うので、うまくその間を使えたと思います」

 鹿島のサイドバックが高い位置で食いつけば、その裏が空く。対面は関西学院大の後輩の濃野公人で、その背中を取る巧みなポジショニングでも1対1の勝負でも、ことごとく上回った。

 この2ゴールは「準備を怠らなかったから」生まれたのだと振り返る。スルーパスを受ける準備、齋藤のシュートがこぼれてくることを予測したうえでの準備。そこには、この日、再三のスーパーセーブでゴールを守ったGKマテウスの金言があった。

「ニアが空くよ、って教えてもらって」

 前節のFC東京との東京ダービーで、GK野澤大志ブランドンとの1対1の場面でファーを狙って止められた。その試合後にマテウスが伝えた「ああいう形になったらキーパーはファーには飛びやすいから、ニアは空いてるよ」の言葉が心に残っていた。先制ゴールのシーンでファーに打つような体の角度を作っておきながらニアに送り込んだのは、まさに「マテウスとのコンビネーション」だったのだ。

 これで今季J1で6ゴールとして、染野唯月と並んでチームで2番目に多くゴールを記録している。同じシャドーのライバルであり仲間でもある染野はこの日は出場停止だったが、鹿島からの期限付き移籍のために契約の都合でそもそも出場できなかった。だが、山見はその代わりだったわけではないことを、自らの2ゴールで証明してみせた。染野と競い合い、高め合う関係性が、さらに東京Vの前線を活性化させていくだろう。


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