7月13日の明治安田J1リーグ第23節で、アルビレックス新潟はFC東京に0-2で敗れた。これで公式戦3連敗と、無敗だった6月とは打って変わって難しい時期を迎えている。現実に向き合って解決策を探る一人が島田譲。自らの変化を恐れずに立ち向かって、チームを再び引き上げる意欲を隠さない。

上写真=島田譲は「6月無敗」の立役者。難しい現状にも逃げずに向き合う(写真◎J.LEAGUE)

■2024年7月13日 J1リーグ第23節(@国立/観衆57,885人)
FC東京 2-0 新潟
得点:(F)遠藤渓太、野澤零温

「僕も全部見えていたわけじゃない」

 公式戦3連敗。その間、相手に許したゴールは、実に12。アルビレックス新潟が不振だ。

 FC東京戦では、松橋力蔵監督が「ノーガードでやられた」と嘆いた6分の1点目と、警戒していたカウンターでねじ込まれた78分の2点目で沈んだ。

 苦しい時期を迎えているいま、そこからどうのし上がっていくべきかは、例えば島田譲のような知識と経験をたくさん持つ選手が知っている。

「もうロッカーでも、監督を含めて話がありました。悪いときには誰かのせいにしたり、前の選手は後ろの、後ろの選手が前のせいにしたり、そういう現象が起きがちです。でも、やっぱり一人ひとりが自分に目を向けて、いまの環境で、自分の立場で何ができるかを本当に考えて、毎日トレーニングに取り組むことがすべてだと思います。自分たちの現状から逃げることなく、一人ひとりが受け止めて前に進んでいくだけかなと思います」

 逃げない、という表現は他の選手たちも使っていて、試合直後の緊急ミーティングで選手たちに染み渡ったのだろう。

 島田自身の戦いを振り返っても、今季のここまで「逃げない」ことを大切にしてきたのが分かる。序盤はなかなか出番に恵まれなかったが、6月16日の鹿島アントラーズ戦からは6試合続けて先発。「6月無敗」の立役者の一人だ。

 ポジションはボランチで、どちらかと言えば激しいボールハントを軸にしたディフェンシブなタイプだが、より前線に近い位置に飛び出しているのが好調のサインだ。際立つのは、相手の守備陣に刺激を与えながら穴を開けつつ、高い位置でフィジカルコンタクトを引き受ける役割。ボランチでコンビを組む秋山裕紀はこれでプロテクトされ、島田の背後で余裕を手にして、前を向いてボールを扱うシーンが増えることになった。

「個人的に序盤は裕紀と組んだときに勝てなかったり、なかなかうまい関係性でできなかったことが正直なところあったんです。だから、自分の立ち位置と、心の持ちようのところで少し変えながらプレーをして、うまくいき出したのが6月ぐらいかなと」

 立ち位置とともに「心」も変えたというところが、聡明なこの人らしい。戦術的な理由だけではなく、自らの振る舞いによって仲間に(特に秋山に)優位性を持たせたい、という滅私の心だ。

 そうすることで、自分自身にもメリットは巡ってくる。「そうそう、オレ、これぐらいできてたよな」という感覚がよみがえってきた。コンディションが整ってプレーレベルが上がった実感によって、改めて自信につながった。

 FC東京戦でも、なかなかテンポが生まれなかった前半から、後半に盛り返すことができたのは、自らが「変化」を怖がらなかったからだ。

「もうボールはある程度、握れていたし、秋山のところでボールを持てたら僕が高い位置を取ることは意識していました」

 センターバックが嫌がるように視界に入ったり距離を詰めたり、さらに裏に抜けたりと、秋山をアンカーにした逆三角形を作るようにして一心にゴールを狙った。

「ただ、そこで質を出したりシュートに結びつくようなところまではいけなかったから…」

 その反省は、松橋監督の言葉からもうかがい知ることができる。チームのいろいろな場所で、相手のスキが「見えている人と見えていない人」がいたことを指摘している。島田は自分自身もその一人であることを自覚する。

「僕も全部見えていたわけじゃないと思うし、もっともっと前方向に質高くプレーする部分は、僕が増やしていかなければいけないところ。そうやって全員が自分に目を向けて、自分が言われてると思って取り組むしかないなと思います」

 無得点は4月7日のセレッソ大阪戦以来だから、不調の間もまったくのゴール欠乏症だったわけではない。それでも勝てなくなったのはなぜなのか。単に失点が多いという当たり前の原因だけでは片付けられない何かを探して、自分たちに問いかける日々は続いていく。


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