上写真=桐蔭横浜大時代の同期、中野就斗(左)と山田新の競り合いは迫力満点だった(写真◎J.LEAGUE)
■2024年6月29日 J1リーグ第21節(@U等々力/観衆22,393人)
川崎F 1-1 広島
得点:(川)マルシーニョ
(広)満田誠
「厚みのある攻撃ができている」
明らかに、この速くて強い男のおかげだろう。川崎フロンターレがより素早く前線にボールを運び、より相手ゴールに近い場所でアクションを起こすことができるのは、背番号20が最前線にいるからだ。
言うなれば「山田新スタイル」。ただ本人は、それが自分の存在だけで成り立っているわけではないと主張する。
「自分とマルシーニョがいるので、速い攻撃が相手にとって脅威になることはチームとして認識していると思いますし、自分が入ることで速い攻撃がかなり多くなっているのは感じます」
左ウイングに入る俊足のマルシーニョと自身で、奥のスペースに2つのパスの届け先ができることをメリットと感じている。23分の先制ゴールは、この2人がきっかけだ。マルシーニョが自陣から前線の山田の足元に鋭いパスを差し込むと、左サイドのスペースに駆け上がった佐々木旭へ素早く展開、そこからの連続攻撃の結果、最後は瀬古樹のシュートのこぼれ球をマルシーニョが蹴り込んでいる。
このシーンのように、ただ速いだけではなく、運んだ先から川崎F本来の巧みなコンビネーションで崩すことができるのが、「山田新スタイル」の魅力だろう。
「そうですね。僕がボールを持つことで時間は作れると思うので、そこで味方の選手がどんどん湧き上がってきて、厚みのある攻撃ができていると思います。引き続きやっていって、さらに向上していかないといけない」
ただ、何でもかんでも山田かマルシーニョへ、では芸がない。
「だから、行くところと行かないところのコントロールもこれから必要になってくると思います」
この日は結局、サンフレッチェ広島に88分に追いつかれてドローに終わっている。山田もマルシーニョもピッチを去ったあとで、3バックにして守り抜く戦略が打ち破られた。
鬼木達監督も重視するのは、守備の崩壊というよりも「2点目を取る意識」の表現方法である。山田はチャンスのきっかけになったものの、ゴールを決めることはできなかった。それが悔しい。
「起点にはなれても、自分自身がゴール前でエネルギーを使うところまでいかないと。もっとゴール前で、自分が起点になるだけじゃなくてエネルギーを使って、違いを見せなければ」
そうやって、責任をまっすぐ自分に向けるのだ。チームトップではあるけれど、リーグ戦で5ゴールは満足できるものではない。その心の強さは、強靭なフィジカルと同じように相手を突き破っていく礎になる。