上写真=ピッチで攻守に存在感を示した宇佐美貴史(写真◎J.LEAGUE)
意識している「ポジティブになるワンプレー」
必要な時に必要な場所にいるーー。
ウノゼロでFC東京とのアウェーゲームをモノにしたG大阪の背番号7、宇佐美貴史の印象だ。
例えば、16分のシーン。GK一森から左サイドバックの黒川へ展開され、それと同時に宇佐美が動く。トップ位置から後方へと下がった黒川からのパスを引き出すと、宇佐美はダイレクトで前線へと送り、ウェルトンへボールを届けた。
ウェルトンからのパスが乱れ、ボックス右から放った山下諒也のシュートは枠をそれることになったが、FC東京の守備のタイミングを外した宇佐美の機転と技術がビッグチャンスを生み出した。攻撃面では相変わらず優れた判断力を見せた。
そして守備面だ。24分の場面。FC東京の快足ドリブラー、俵積田の突破を自陣深い位置まで下がり、スライディングタックルで止めた。自身のパスがカットされたところから始まったプレーだったが、半田陸のカバーに懸命に走り、相手のチャンスを潰している。
今季の宇佐美は攻撃はもちろん、守備でも貢献度が高い。文字通りチームの中心として随所でプレーが効いている。
「(スライディングで止めた場面は)自分のミスだったんで、陸なら止めてくれるだろうと思っていましたけど、ただイレギュラーというかごちゃごちゃっとした中で突破されたので。俵積田選手が突破力のある選手というのはわかっていましたし、(FC東京の)右と左なら、左がだいぶ気になってくるだろうなと思ってたんで、戻るしかないと思いました。あそこで中途半端に遅らせるだけじゃなくて、タックルで潰し切るっていうところがすごく大事かなと思いますし、それがチームに与える影響というか、こっちもすごくポジティブになるので。ワンプレー、そういうプレーを今年は特に意識はしているので、ミスがなければ一番よかったですけど」
宇佐美の言う通り、チームを鼓舞するプレーだったのは確かだ。スライディングで俵積田を止めた直後に飛び出したガッツポーズには、そんな思いも込められていたのだろう。ミスを恐れて消極的になるのではなく、リスクを冒してチャンス拡大を目指し、そのうえでミスは全力で取り返す。そうしたポジティブな姿勢は他の場面でも見て取れた。
試合は終盤の85分、山田康太がゴールを決め、G大阪が1−0で勝利を収めた。アディショナルタイムにベンチに下がった宇佐美は、ベンチから声で仲間を鼓舞する姿も印象的だった。
これで5月は4勝1分け1敗。12節の大阪ダービーを制して以降は5戦負なし。上昇気流に乗ったチームの中心には、背番号7を背負い、キャプテンマークをその腕に巻く、宇佐美がいる。
取材◎佐藤景