3月9日のJ1第3節で京都サンガF.C.は川崎フロンターレを1-0で下した。決勝ゴールを決めたのは川﨑颯太だが、ここに関与したのが原大智だった。前半の「幻のゴール」も演出している長身ストライカーは、古都のクラブで花開いている。

上写真=原大智は今季も京都の最前線で主力として信頼を得ている(写真◎J.LEAGUE)

■2024年3月9日 J1リーグ第3節(@U等々力/観衆20,757人)
川崎F 0-1 京都
得点:(京)川﨑颯太

センターフォワードは「懐かしい」

 FC東京のアカデミー育ちだから、そのライバルチームである川崎フロンターレが相手だと、ふつふつと闘志が湧いてくるのでは?

「普通のチームとやるよりは、やっぱり多摩川クラシコをずっと見てきましたから、そういう思いもありますけど、でもそれくらいですかね」

 変に気構えるようなことがないところが、原大智というストライカーの長所なのだろう。肩肘張らずに、でも一生懸命にゴール前で体を張り続ける。

 昨季途中に加わった京都サンガF.C.では曺貴裁監督に重用され、13試合に出場して7ゴールと結果を残した。今季も信頼は変わらず、開幕から3試合すべてで先発している。一つ違ったのは、川崎フロンターレとの第3節ではそれまでの3トップの左ではなく、センターフォワードだったこと。

「ずっとやってきたという意味では真ん中がいいですけど、(左は)新しい可能性だと思うので、どんどんチャレンジしたい。中央のときは、サッカー人生のほとんどをそこでやっていたので懐かしい部分もあるかな、という感じです」

 いわば「ホーム」となるセンターフォワードで自分に求めたのは、やはりゴールだ。

「前でしっかり時間を作って、今日はゴールはできなかったんですけど、ゴールに近いポジションなのでそこは求められていると思います」

 確かに自分で決めたゴールはなかったが、「2ゴール」に絡んでいる。

 まずは、7分。CKの流れからペナルティーエリア内右で足元にボールが飛んでくると、相手と競り合いながらもうまく中央へラストパス。待ち構えていた川﨑颯太ががら空きのゴールに難なく決めた。しかし、トラップしたときに原にハンドの反則があったとして、ゴールは認められなかった。

 だが、65分には本物のゴールを演出してみせた。またもCKの流れから豊川雄太が放ったシュートをGK上福元直人が弾いた。その落下点にいた原が相手と競り合ったところに上福元が跳んできて必死に手を伸ばしてパンチング。しかし飛距離が出ず、落ちてきたボールを川﨑が蹴り込んだ。これが決勝ゴールになった。

「​​こぼれてきたところでもう少し出ていれば触れたと思うんですけど、それでも得点にはつながったと思うので、また狙っていきたいです」

 191センチの長身は、そこにいるだけで相手の焦りを誘うことができる。競り合ったときに後ろから少し押されているのだが、それも原の長身を警戒されてのこと。その結果、少しバランスを崩したところに上福元がぶつかってきたから、上福元もパンチングの瞬間に力をボールにうまく伝えきれなかっただろう。そこにいるだけで、見事な「アシスト」である。

 後半開始からはマルコ・トゥーリオが入り、ここ2試合と同じなら原が左に回るところだが、そのまま中央に立った。かと思えば、途中から入れ替わってマルコ・トゥーリオを中央に立たせた。右が基本の豊川雄太もどんどん中央に、ときには左まで斜めに切り込んで相手にとってやっかいな動きを繰り返していた。

「トゥーリオ選手も入ってきて特徴も分かってきました。スリートップの中央はある意味ワントップ気味になって、うまく連係できないと孤立しやすいので難しさはあるんですけど、シーズンを通してそこが強くなれば京都は強くなると思います」

 長身だがスピードもあって裏に抜け出せるし、狭いエリアに潜り込むこともできる。左右両足からのシュートも強烈で、失った瞬間に切り替える守備のパワーも身につけた。FC東京時代には力強さに欠ける面もあったが、クロアチア、スペイン、ベルギーでの経験で苦労を重ね、たくましくなった。

 そんなピッチでの存在感に比べると、朴訥としてまろやかな語り口にギャップを覚えるが、そのおおらかさも魅力である。どんなときにも揺るがずに構えるメンタルは、チームに安心感をもたらしている。


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