上写真=42分に木村勇大(20)がJ1初ゴールを見事なボレーで決めた(写真◎Getty Images)
■2024年3月3日 J1リーグ第2節(@埼玉ス/観衆50,863人)
浦和 1-1 東京V
得点:(浦)アレクサンダー・ショルツ
(東)木村勇大
「いかに前線で時間を作れるか」
大胆で鮮やかな先制ゴールだった。
42分、見木友哉が送った左CKがファーへ流れていくのだが、山田楓喜があきらめずに拾って後ろへ、これを深澤大輝がハイボールを蹴ってもう一度逆サイドへ振ると、山越康平がヘッドで折り返し、これに木村勇大が反応した。ゴールを背にしながらうまく体をひねり、ボールを呼び込むようにしてから右足でボールをしっかりたたくボレーシュート。ゴール右に飛び込んだ。
「難しい体勢だったんですけど、チームとしてもシュートがなかなか打てていない状況だったので、強引に足を振ろうかなと思って。いい感じにミートして、入ってくれてよかったなって感じです」
ちょうどホームのサポーターが陣取る目の前で決めたから、その直後に飛んできたのは大ブーイング。それをBGMに仲間と喜びあうことになった。感覚で打ち込んだ一発だったという。
「イメージはあったんですけど、相手のディフェンダーがみんな大きくてゴールが見えなくて。でも、あそこは自分の感覚としてあるので、そこがいい形で出せたかなと思います」
アウェーでの先制弾で、しかも自身にとって記念のJ1初ゴール。だが、振り返る表情も口調も淡々としていた。理由は二つある。
「うれしかったですけど、ゴールを求められてこのチームに呼ばれてるんで、1点決めてどうだとは言っていられないと思うんです」
たった1点では、まだ仕事をし始めたばかり、という自負である。もう一つは、勝てなかったこと。89分にPKを決められて1-1で終え、ヒーローになり損ねた。
「チームを勝たせるゴールをこれからも狙い続けていくしかないと思うんで、また次すぐに2点目を決めれるようにやっていきたい」
開幕戦でも1-0でリードしながら、89分と90+3分に連続ゴールを浴びて、まさかの逆転負け。この試合は逆転こそ阻止したものの、またもや同じ「89分のPK」に泣かされた。
「前節に続いてまた同じ時間に失点してしまって。そこをどう改善するか。あれだけ押し込まれる時間が続いたら、やっぱりああいうミスも出てきてしまうと思います。それに、それまでにチャンスがなかったわけではなくて、自分を含めて前線の選手が2点目を入れたら、後ろの選手の戦い方も変わって、ゲームとしてはもっと楽に進められます。また同じ課題が今日も残ってしまったなと」
2022年に京都サンガでJ1デビューしたのが浦和戦で、23年もこの相手は経験している。だが、どちらもホームゲームだったので、埼玉スタジアムでプレーしたのは初めてのこと。
「前節に比べて自分と染野(唯月)が孤立する場面が多くて、そのときの後ろからの圧は、サポーターも含めていままで経験したことがない。 その意味で、やっぱり強いチームだと改めて思いました」
だからといって、怖気づいたわけではない。そこで何をすべきかが見えた時点で、収穫だった。
「そういう状況の中でいかに前線で時間を作れるかが、このチームが勝っていくために大事なこと。もっと時間を作って、みんなを押し上げられる時間を作れるようにしていきたい」
J1初ゴールの思い出は、勝利がするりと逃げていったことでほろ苦さを伴うことになった。でも、それと引き換えに気づいたこともある。この一発は、東京Vに16年ぶりの勝ち点をもたらしただけではない。