上写真=高宇洋は新潟で確かなキャリアを積んで、首都クラブにやってきた(写真◎FC TOKYO)
ハンター+パサー+レシーバー
FC東京はMF遠藤渓太をウニオン・ベルリン(ドイツ)から、FW小柏剛を北海道コンサドーレ札幌から、MF荒木遼太郎を鹿島アントラーズから獲得した。なかなか派手な補強だ。
2023年はアルベル監督を指揮官に起用したものの、リーグの半分を終えたところで監督交代に踏み切り、18節からはピーター・クラモフスキー監督にバトンタッチ。ありていに言えば、ポゼッション型からゴール直結型へ、あるいはゴールへのルートが曲線から直線へと方針転換した、というイメージだろうか。その中で、失点数は28から18へと減じて改善傾向にあったが、そのトレードオフなのか、得点は22から20へと微減している。
クラモフスキー監督は戦術的なポイントをなかなか明かさないタイプだが、守備の整備から攻撃の構築を試されるシーズンになるだろう。川岸滋也社長はデータを示しながら攻撃の改善の兆しは見えているという分析を明かした。「+1 GOAL」を旗印に掲げながら、具体的には2023年の1試合平均得点1.23を1.3に引き上げるところを通過点として見据え、失点は1.35を1にする、という基準を提示した。
だからこそ、補強は攻撃の厚みを増す方向性が目立った。アダイウトン(→ヴァンフォーレ甲府)、渡邊凌磨(→浦和レッズ)はチームを離れたものの、金看板のディエゴ・オリヴェイラ、仲川輝人、俵積田晃太に、派手な補強トリオが加わる攻撃スタッフは、J1でも脅威になるだろう。
そんな攻撃陣に目が向かいがちだが、彼らを支えるミッドフィールドが盤石なら、もっと面白い。ここにはアルビレックス新潟から高宇洋が加わっている。
中盤の形がどうであれ、つまり最終ラインの前に2人が並ぶ正三角形でも、1人でカバーする逆三角形でも、そこに入る選手のキャラクターでゲームマネジメントは変わってくる。上に挙げた攻撃陣は迷いなくゴールに突き進むタイプが多いだけに、なおさら手綱さばきが見ものになる。
特に中盤のセンターでプレーできる顔ぶれを眺めると、青木拓矢が契約満了、塚川孝輝が京都サンガへ期限付き移籍となったものの、品田愛斗が期限付き移籍を終えて甲府から復帰、昨年からの松木玖生、小泉慶、東慶悟、原川力といった面々が揃っていて、高もこのグループに入ってしのぎを削ることになる。
「本当にたくさんいい選手がいるので、いろいろと吸収したいですし、ただ自分も勝ち取る思いで来ているので、しっかりと自分のポジションを勝ち取って存在感を出していきたい」
新潟では中盤の要として、存在感は抜群だった。昨年はリーグ戦31試合出場と、チームで最も多い試合数を記録した。自身の強みについて「ボールを奪うところを見てほしい」と話すが、それだけではなくスタイルはハイブリッド型で、ハンター+パサー+レシーバーの「三刀流」だ。
新潟で磨いてきたのは、ボールを奪うという最強の武器にとどまらない。奪ったあとに素早く効果的にボールを動かす疾走感、出したあとに足を止めずに自ら前線に出ていってボールを引き出すランは、新潟のJ1復帰のシーズンを彩った。
「自分の強さであるボールを奪うところや予測力、運動量については、1年を続けて継続できましたし、自信になるような部分もありました。新潟のスタイルで攻撃のときにボールを持つというところについても、しっかりと1年を通して成長しました。もちろん、攻撃のところでは前に関わるところも含めてもっと成長させたいですし、自分の武器ももっと伸ばしたい。いまの時代、ボランチにはいろいろなことが求められるので、すべてにおいてハイクオリティーな選手になっていきたい」
その特徴をFC東京に組み込む上で、中盤のパートナーを選ばない柔軟性も生きるだろう。例えば、アンカー的に低く構えて松木を前に出して攻めに注力させることもできるし、小泉に後ろを任せて自らがゴール前に入っていくこともできる。攻撃から守備に転じるトランジションの速さも十分に通用するところを見せてきて、まさに仕事人。青赤のコアになる可能性は十分に秘めている。
「練習はこれからですけど、攻守にアグレッシブに戦いながら、ボールも保持したいというイメージがあります」
高がそう感じるFC東京のフットボールについて、クラモフスキー監督は「誰が見ても面白いと思ってもらう」攻撃的なスタイルを貫くことを宣言している。リーグ優勝を目指すそのチームにあって、「三刀流」を誇るこの新しい背番号8が、まさしく舵を取る姿がいまから楽しみだ。