26歳最後の日に、2試合連続ゴールはならなかった。10月1日の明治安田生命J1リーグ第29節G大阪戦で、FC東京のMF渡邊凌磨は、そのわずか手前にまで迫りながらゴールを奪いきれなかった現状を悔やむ。それでも、攻め続けたこの90分で見えたこともある。それが「やりたいプレーを出すこと」。

上写真=渡邊凌磨はチャンスメークとテンポのコントロールでチームを引っ張った(写真◎J.LEAGUE)

■2023年10月1日 明治安田生命J1リーグ第29節(@味スタ/観衆30,521人)
FC東京 3-0 G大阪
得点:(F)原川力、ディエゴ・オリヴェイラ、俵積田晃太

「自分だけじゃなくて、周りの数字も」

 10月1日、ガンバ大阪をホームに迎えた「FC東京25周年記念試合」は、渡邊凌磨にとって26歳最後の試合だった。翌2日は27回目のバースデー。

 ほとんど同じ時間を積み重ねてきたこのクラブと、そこでプレーする自分にとって、大切なことは何か。フル出場した背番号11が得たのはいわば、リミッターを外すこと、だった。

「最後の最後の場面では、 あんまり味方どうこうではなくて、自分のやりたいプレーを出すことが、個人としては大事かなって」

 チームプレーに反する独善を突き詰める、という意味ではない。最善を尽くして迷いなくゴールに向かわなかったのではないか、という自己への問いかけである。

 前半の半ばまでに見舞われたピンチの連続をなんとかやり過ごすと、原川力とディエゴ・オリヴェイラのゴールによって落ち着いて試合を進めることができた。トップ下が定位置になってきた渡邊も、無理に前がかりに攻めるのではなくて、相手の獰猛さを手なずけるようにペースダウンのパスを織り交ぜながら、チームのテンポをコントロールしていった。

「スイッチを入れていくところがうまくいったかな、というのと、どうやったら自分たちの形が出せるかが、ある程度分かったゲームだった」

 前節のサガン鳥栖戦で前半に食らった2点のビハインドを、自らの同点ゴールを含む後半の3ゴールでひっくり返した。その成功体験が、G大阪戦を進めていく上で有効だった。スイッチを入れるところが分かったということは、スイッチを入れないでおくところも理解できた、という意味に他ならない。

 ただ、「26歳ラストゴール」はついに決まらずじまいだった。

 33分、原川の左CKに合わせてニアに飛び込んだシーンは、そのタイミングも、ヘッドで狙ったコースも申し分なかったが、GK東口順昭の好セーブに阻まれた。45+2分には、仲川輝人の優しい落としのパスから狙ったが、ゴール左へ。後半開始1分もたたないところで左サイドで松木玖生に短いスルーパスを送っていきなりビッグチャンスを演出。51分には左からのアダイウトンの折り返しに左足でダイレクトシュートを放ったが、無情にも左ポストをたたいた。

 そんなビッグチャンスの他にも、後半にはカウンターの急先鋒となり、前に出てくる相手の裏をディエゴ・オリヴェイラとの連係でめざとく突き続けた。54分にはドリブルで突き進み、ディエゴ・オリヴェイラにラストパスを送ってシュートを導いた。58分には逆にディエゴ・オリヴェイラからのパスを左で受けて持ち運び、仲川への折り返しを狙った。84分には右深くからの白井康介のクロスをGKがはじいたこぼれ球を収め、右足でコースを狙うループシュートを放ったが、わずかに上。

 3年目を迎えるこのチームで遠慮する立場ではもうないが、チャンスを決めきれなかったからこそ、冒頭の「味方どうこうではなくて」の言葉につながっていく。こうしたすべてが「やりたいプレー」だったかを、自らに問いかける。個人の欲というよりは、チームに利益をもたらすと分かっているからだ。

「チャンスを作る試合が多ければ多いほど、自分がもっともっとゴールを取れると思うし、それを本当に1年を通してやっていかなければならないと改めて見えました。そうすることで、自分だけじゃなくて、周りの数字もどんどん上がっていくと思うので、もっともっと続けなければ」

 これで今季4度目の連勝を飾ったが、「遅い」と悔やむ。

「本当に結果を出さなければいけないときに勝てるチームだということは、もう前々から分かってはいたんですけど、そうではないところで負けているのは反省点。この2試合に勝っても、うれしいけれど正直遅いから、もっともっと勝ちを積み重ねて、こういうゲームを続けられるようにしなければいけない」

 できるのにできていないのだから、勝利の余韻にひたっている暇はない。そう訴えかけていた。勝利あるのみ。それが渡邊凌磨が本当に「やりたいこと」である。


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