10月1日の明治安田生命J1リーグ第29節で、FC東京の原川力がガンバ大阪から移籍後初ゴールを奪った。鮮やかなコンビネーションから試合を優勢に進める先制ゴールが生まれた裏には、いくつものエッセンスが詰まっていた。

上写真=原川力のゴールは、このチームが連係によって奪うことができた、という深い意味がある(写真◎J.LEAGUE)

■2023年10月1日 明治安田生命J1リーグ第29節(@味スタ/観衆30,521人)
FC東京 3-0 G大阪
得点:(F)原川力、ディエゴ・オリヴェイラ、俵積田晃太

確信のコース取り

 待っていたのは、このゴールだ。

 この夏にFC東京に加わった原川力にとって、移籍後初めてのゴールであるということ。そしてもう一つ、複数の選手が連動して個性を組み合わせ、相手を翻弄して決めたゴールだということだ。

 37分、松木玖生が右に展開し、長友佑都が中央へ平行にパスを届ける。ディエゴ・オリヴェイラがタッチすると見せかけてそのままスルー、中央にいた仲川輝人が足元に置くと、その右横をするりと走り抜けた選手がいた。それが原川だ。

 仲川が走った先にていねいに届けると、原川は縦に抜けてから低く鋭いシュートをねじ込んで、FC東京に先制ゴールをもたらした。

 移籍後初ゴールという意味においては、このヒーローは意外にもサバサバしていた。

「うれしいけれど、それ以外で満足していないというか、ちょっとミスが多くて…」

 松木とボランチを組んでガンバ大阪のアタッカーを見張り、奪ってさばく。そんなベースとなるプレーの質に反省を求めるほうが先に立った。

 でも、鮮やかなコンビネーションで決まったことについて話すときには、笑顔がこぼれた。

「これまで東京と対戦してきても、個人個人で攻めてくるという感覚がありました。でもこうやって連係しながら崩すことができたし、個人個人の能力はありますから、それプラス、周りを見ながら、連係しながら今日のようにできれば、もっともっと怖さは出ると思いますよ」

 まさに「怖さ」を自ら証明するゴールになったが、「練習でやってきた通り」なのだと明かす。仲川がボールを受けたときに、そのすぐ右側を走り抜けていて、コースもタイミングも絶妙だった。

「あの脇のところは、得点の前にも左サイドで2、3回、入っていっていて、あまり誰もついてこなかったので、続けていこうって思っていたんです」

 練習だけではなくて、試合の中でも何度も「テストラン」を重ねていたからこそ、確信のコース取りだったというわけだ。

 走った先で仲川からのボールを受けると、勝負を仕掛けた。一度止めておいてから、相手が食いついてきた矢印を外すようにして縦に抜けるというテクニックを使っている。

「いや、まあ、感覚なんですけど、ファーストタッチしたときに相手がシュートコースに入ってきたので、うまくシュートポジションのところに運べたと思いますし、そのあともうまく流し込めたかなと思います」

 そのフィニッシュはGKの名手・東口順昭の足元を鋭く抜いている。

「2つ目のタッチでうまく運べたので、その瞬間にちょっとタイミングをずらしながらというか、早めに打とうかなと思って、うまく外して流し込めたかなと思います」

 相手が予測するよりもほんの少しだけ早いリズムで足を振った。だから、東口が足を運ぶよりも先にその足元を通すことができたのだった。

 たくさんのエッセンスが詰まった移籍後初ゴール。これからのFC東京はきっと「怖い」存在になるだろう。


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