上写真＝熊田直紀が第一歩を記すゴールを決めた（写真◎J.LEAGUE）
■2023年9月3日 明治安田生命J1リーグ第26節（@味スタ/観衆16,068人）
FC東京 1-2 福岡
得点：（F）熊田直紀
（福）佐藤凌我、山岸祐也
「個人的には絶対に決められると」
「なにもないっすね、今日のは」
それが、熊田直紀のJ1での初めてのゴールに対する率直な思いだという。
アビスパ福岡に2分と11分にゴールを許し、FC東京はなかなかゴールに迫れないまま時間ばかりが過ぎていく。ルーキーのストライカーに声がかかったのは74分で、ディエゴ・オリヴェイラに代わってピッチに飛び出していった。
第6節のサガン鳥栖戦では82分、第21節の鹿島アントラーズ戦では86分からの出場だったから、「これまでと比べると、早い時間帯に出場することができた」とより多くのチャンスを引き寄せるつもりだった。「押し込んでいる時間帯での出場で、個人的には絶対に決められると思っていました」の予感が体を包む。
それが現実になった。86分の左CK。原川力がファーに落ちてくるボールを蹴り込むと、飛び込んだ勢いのままヘッドでたたいた。待ちに待ったJ1初ゴールが、逆襲ののろしになったが、まだ1点を返しただけだから、喜びの表情を浮かべることもなく急いでキックオフを待った。
「自分としては最低限の結果を残すという気持ちで入ったので、最低限の得点を取ることができたのは良かった」と振り返る一方で、「前半の内容がもったいなかった」とも指摘する。「得点という結果を残すのがフォワードというポジションでは当たり前のこと」と言い切るものの、同点、さらには逆転までもっていけなかったことは「勢いがあっただけにもったいなかった」と悔やむ。
アカデミー出身で、今年はU-20ワールドカップも経験した大型ストライカーに集まる期待感は、本当に大きい。朴訥とした受け答えにはシンプルだからこその力強さが宿り、そこにようやく結果がついてきたから、このゴールを未来への大きな一歩にしなければならない。だが、初ゴールの歓喜よりも敗戦の悔しさが上回り、ここまで時間がかかったことに納得がいかない。
「単純に自分の実力は足りなかったんじゃないかなと」
9月から10月にかけて行われるアジア大会に出場するU-22日本代表に選ばれたばかり。それでも「こっち（FC東京）で結果を残してからですね」と一喜一憂はしない。
「最近は練習でもゴールという形が多くできてきているので、出場時間を伸ばしてそれを試合で出せればなと思います」
長い時間プレーしてチャンスが来れば、決めることができる。その自信が、やはりシンプルなこの言葉の中に眠っている。
