佐藤凌我が味の素スタジアムに華々しく帰ってきた。9月3日の明治安田生命J1リーグ第26節で、アビスパ福岡の一員としてFC東京と対戦、開始2分の先制ゴールなどで勝利の立役者になった。最前線でかき回して、チームをつなぎ、過去と現在をつなぐ納得のパフォーマンスだった。

上写真=佐藤凌我は懐かしの味の素スタジアムにゴールで堂々凱旋!(写真◎J.LEAGUE)

■2023年9月3日 明治安田生命J1リーグ第26節(@味スタ/観衆16,068人)
FC東京 1-2 福岡
得点:(F)熊田直紀
   (福)佐藤凌我、山岸祐也

長友佑都へのあいさつ

 試合前、FC東京の長友佑都に近寄って声をかけた。

「試合前にあいさつさせていただきました。高校と大学の直系の大先輩と、いまこうやって一緒にプレーできるのは本当にうれしいです」

 日本サッカーを力強く牽引してきた東福岡高、明治大の先輩と戦うことのできる感慨を胸に、ピッチに飛び出した。そうしたら、たった2分で、その大先輩をも困惑させた。

 ペナルティーエリア内左で受けた前寛之のセンタリングに、中央で山岸祐也が飛び込んでいった。ジャンプしたもののわずかに頭に届かず、そのままゴール前を通過してしまう……と思われたところに颯爽と走り込んできたのが、佐藤凌我だった。

 右足を思い切り伸ばしたフライングボレー! きっちりとボールを捕らえて押し込んで、見事にゴールネットを揺らしてみせたのだ。

「いいところにボールが来たので、あとは決めるだけでした」

 決めるだけ、にしては、山岸が触れそうでもあったから、次にどんなプレーを選択するかの判断は難しかっただろう。

「ボールが見えなかったことはなかったんですけど、ヒロくん(前)からボール入ってくると自分も祐也くんも感じてあそこに飛び込んでいきました。祐也くんが触れなくても自分がいけるようにという準備はしていったので、うまく触れてゴールに入ってよかったです」

 先制のヒーローは爽やかに笑って、もう一つ「いい攻撃の形で関わりながらクロスからの得点というストロングポイントで先制点が生まれたので良かった」と、このシーンに胸を張った。

 キックオフ直後からボールがどちらにも落ち着かない中で、振り返ってみると、中盤で紺野和也のボール奪取から始まって、佐藤、井手口陽介、紺野、佐藤で右を割り、折り返しを前、山岸、前とパス交換して中央突破から前がシュート、これは止められたが、こぼれ球を左で小田逸稀が拾ってまたも中央へ、相手の軽率なクリアミスを拾った紺野がシュート、ブロックされたボールが右に流れ、前嶋洋太がさらに大きくサイドチェンジ、受けた前が中に入れ、山岸を越えた先で佐藤が決める、という展開だった。

 のべ12人が滑らかにつながって、押し込んで、左右にボールを素早く大きく動かして、こぼれ球を回収してさらにゴールに向かう。そんな連続アタックで生まれた、理想的なゴールだったのだ。

「シーズン当初からチャレンジしている部分でもありました。外に振って中を突いて、もう1回外に広げて、外からクロスという形がうまく出ました。もっともっとこういうシーンを増やして、いろんなバリエーションで得点できるようにしたい」

 ここに、佐藤の大きな貢献がある。

「周りとのつながりが上手な選手です」

 この試合の4日前、8月30日の天皇杯準々決勝・湘南ベルマーレ戦で採用した3-4-2-1の配置を、この試合でも用いた。前線の3枚は右から紺野、佐藤、山岸の並びだが、特徴的なのが頂点に佐藤が立つことだ。長谷部茂利監督は佐藤について「サイドハーフをやることも多かったですが、もともとはフォワードの選手ですから」と適性に触れ、その充実のプレーぶりに目を細める。

「攻守において、周りとのつながりが上手な選手です。自分で周りに発信できるし、周りが発信したことに対して攻守につながっていくプレーがうまいんです。ボールを受けるのも持ち味ですから、これからも出していってほしいですね。点も取ったし、それが何より本人もチームも一番うれしいことです」

 攻守をつなげるリンクマンといえば中盤の選手の代名詞だが、そのタスクを最前線で実行できる頼もしいセンターフォワードというわけだ。そんな長谷部監督の評価は、佐藤の高い意識がもたらしたものである。

「自分が中央にいることや、左右にも顔を出してボールが動くようにしていくことは意識している部分です。ただ、もっともっと得点が取れるシーンはあったので、そこの質は上げていきたいな」

 昨年までは東京ヴェルディの選手としてプレーしていたから、古巣の同じ街の「ライバル」を下したことにも感慨を覚えるし、何より、懐かしのスタジアムでの勝利は格別だ。

「懐かしさもあり、逆にアウェー側としてここに来る新鮮さもありました。このスタジアムは好きですし、ここで久しぶりにゴールを決められてうれしく思います」

 過去から現在へとつながる象徴的な舞台で、その間の成長をたっぷりと見せつけるパフォーマンスに、いつまでもまぶしい笑顔は消えなかった。


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