ヴィッセル神戸が6日、国立競技場でバルセロナ(スペイン)と対戦した。親善試合として行われたこの一戦は、この夏で神戸退団が決まっているアンドレス・イニエスタにとって古巣との試合でもあり、大きな注目を集めた。イニエスタは先発し、80分までプレー。結果はバルセロナが2−0で勝利を飾った。

上写真=ベンチに下がるイニエスタにバルセロナのシャビ監督が駆け寄った(写真◎小山真司)

改めて実感したイニエスタの偉大さ

 日本時間5日早朝のラ・リーガ最終節を戦った後、中0日という強行軍で来日したバルセロナ。同試合の先発から6人入れ替えているとはいえ、長旅もあり、さすがにコンディションは万全ではないだろう。

 ただ、最初にスタンドのどよめきを誘ったのは、そのバルセロナだった。左インサイドハーフのパブロ・トーレがボックス左から狙い、シュートが右ポストを直撃。あわやの場面を作り出した。

 基本技術はもちろん、パスワークで密集を抜けるバルセロナのプレーが冴える。そうかと思えばミドルレンジのパスでボールを走らせ、神戸の選手を背走させてみせる。親善試合であり、コンディション面を考慮していることもあってハナから高強度の試合にはならないことは予想されていたが、序盤はバルセロナのペースに神戸が付き合う展開になった。

 先制ゴールが生まれたのは16分。決めたのはバルセロナのケシエだ。トーレのパスに反応してボックス内に進入すると冷静に蹴り込み、ネットを揺らした。その3分後、今度はセットプレーからバルセロナが加点する。左CKのチャンスにトーレが蹴ったインスイングのボールをエリック・ガルシアがゴール正面でヘッド。リードを広げた。

 一方、神戸のチャンスは31分。今夏で神戸を退団するイニエスタがみせる。リンコンのパスを受けてボックス左から右足を一閃。シュートはわずかに左に逸れたが、惜しい一撃にスタンドが沸いた。イニエスタにとって古巣相手のこの試合がどういう意味を持つか、多くのファン・サポーターが理解している証拠だった。

 その1分後、サンペールが右足で狙ったシュートは右に外れ、35分のイニエスタの右CKからリンコンがヘディングで狙ったシュートはGKペーニャの正面を突いた。2点のリードを許して以降、神戸が立て続けにチャンスを創出した。しかし、バルセロナもゴールは割らせない。43分には汰木がボックス左に走り込んでシュートを放つもペーニャの好守に遭い、前半終了間際にイニエスタが斉藤とのワンツーでボックス内からシュートを放ったが、これまたペーニャにストップされた。

 4日後のJ1の試合(セレッソ大阪戦)を考慮して後半開始から5人を一気に代えた神戸は、前半終盤の勢いを持続し、攻勢を強めていく。バルセロナも疲労を考慮して61分までに8人を交代させたが、守備の堅さは維持された。

 80分、この試合の象徴的なシーンが生まれた。イニエスタが井出と交代でベンチに下がったが、その際に現在のバルセロナの監督であり、かつて盟友であるシャビが歩み寄り、がっちり握手をかわしたのだ。国立競技場が大歓声に包まれたのは言うまでもない。

 神戸は武藤や大迫も投入したが、ネットは揺れず、試合はバルセロナが2−0で勝利を飾った。

 試合後は改めてイニエスタの偉大さが証明されることになった。バルセロナ選手たち、スタッフが歩み寄りイニエスタと言葉を交わす。そして再びシャビと抱擁。笑顔で写真にも収まった。

「ここに集まってくれたファンの皆さんに感謝しています。自分たちが天皇杯を掲げた特別なスタジアムでプレーできて本当に嬉しいです。(シャビ監督との試合だったが)バルサ24時間が強行スケジュールできてくれて嬉しいですし、何よりみんなに楽しい1日になってくれたら。(日本での5年間について)本当にファンの皆さんの愛情に感謝しています。日本は自分にとって我が家のようなものです」

 イニエスタはピッチからマイクで感謝の言葉を述べた。そして敵将シャビ監督は試合後の会見でこう言って盟友を称えた。

「イニエスタはベテラン選手ですが試合中に見せていたクオリティは目を見張るものがありました。常に素晴らしい選手ですし、スペインサッカーにもバルサにも素晴らしいものをもたらした選手です」

 イニエスタは7月1日の札幌戦を最後に、神戸を離れることが決まっている。

▼出場メンバー
・神戸:GK前川黛也(87分:フェリペ・メギオラーロ)、DF高橋祥平、尾崎優成、大崎玲央(80分:マテウス・トゥーレル)、初瀬亮(46分:日高光揮→87分:寺阪尚悟)、MF齊藤未月(46分:扇原貴宏)、セルジ・サンペール(80分:中坂勇哉)、アンドレス・イニエスタ(80分:井出遥也)、FW佐々木大樹(46分:川崎修平→80分:武藤嘉紀)、リンコン(46分:ステファン・ムゴシャ→84分:大迫勇也)、汰木康也(46分:ジェアン・パトリッキ)

・バルセロナ:GKイニャキ・ペーニャ(61分:アルナウ・テナス)、DFジュリアン・アラウージョ、エリック・ガルシア、フランキー・デヨング(46分:ジュール・クンデ)、マルコス・アロンソ(46分:エクトル・フォート)、MFフランク・ケシエ(46分:ガビ)、パウ・プリム、パブロ・トーレ(61分:ウナイ)、FWダニ・ロドリゲス(46分:フェラン・トーレス)、ロベルト・レバンドフスキ(46分:マルク・ギウ)、アンス・ファティ(46分:ラフィーニャ)


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