上写真=カメラマンのリクエストに応じてポーズをとる徳元悠平(写真◎J .LEAGUE)
僕も本気で日本代表を目指しています
今季、ファジアーノ岡山からFC東京に加わった左サイドバックが大舞台で輝いた。左サイドバックで先発すると前半12分、先制ゴールをスコアした。
「クロスじゃダメだ。ここは振りにいこうって。チームとしてシュートをあまり打てていなかったので何かきっかけになればいいなと」
長友佑都の右からのクロスがゴール前で合わず、ボールが流れたところを拾うと、チェックに来た家長昭博をかわして、ボックス左脇から進入。角度はあまりなかったが、思い切りよく右足を振り抜き、逆サイドにシュートを突き刺した。
利き足は左。逆足だったが、「岡山時代も決めていますし、得意かもしれません(笑)」。
城西国際大から当時J3のFC琉球に加入し、J2の岡山で4年間、実績を積み上げて、J1にたどり着いた。這い上がってきたというよりも、着実にキャリアを重ねてきた印象を受ける。国立競技場を沸かせたゴールはJ1初ゴールであり、加入後初得点。最高の形で自らの力を示したが、この日の活躍はそれだけに留まらなかった。
25分、今度は利き足でゴールを導く。ボックス手前でパスを受けると鋭く縦に仕掛けてボックス左からクロスを供給。安部柊斗のゴールをお膳立てした。
「右で1本、シュート打っていることによって、またシュートあるんじゃないかなと相手が思った股の間を突けたので、よかったです」
1ゴール1アシストでこの日、チームが記録した2ゴールに絡んだ徳元だが、開幕から5試合はメンバー外になったり、ベンチで過ごしたりと、出場を機会を得られなかった。だが、トレーニングに真摯に打ち込み、3月のルヴァンカップ2試合で先発を果たし、リーグ戦でも4月1日のサガン鳥栖戦で先発を飾った。
3月28日の日本代表戦(vsコロンビア)で左サイドバックのポジションを争うバングーナガンデ佳史扶が負傷した影響もあったが、徳元は巡ってきたチャンスを生かした。結果、佳史扶が復帰後もコンスタントに先発機会を得て、多摩川クラシコでもスタートからプレーしたのだ。
むろん、ライバルは日本代表であり、本人はこの日の活躍をもってしても定位置を確保したとは思っていない。「佳史扶は代表選手ですし、(これまで)僕がスタメンだと思った試合はないです。それぐらいリスペクトした上でやれているのがいいプレーにつながっていますし、僕も佳史扶にもいいプレッシャーを与えているのかなと思います。いい意味でバチバチです。日頃からわからないことあれば聞いてますし、ライバルですけど、良い関係性が作れてるからこそ、お互いにいいプレーができていると思います」と話し、今後も定位置争いが続いていく覚悟を口にした。
一方で佳史扶もこの日の徳元のプレーについて「素晴らしかったですし、本当にいい刺激をもらったと思っています。自分も、もっと頑張ります」と試合後に語り、さらなる向上を誓っていた。この日は右サイドバックとしてプレーした長友も含めれば、FC東京の左サイドバックの層は厚い。ポジション争いの激しさは当然ながら、チーム力の向上にもつながっていく。
「僕も本気で日本代表を目指していますし、今日のプレーで満足したら、その上はないと思っているので、次の練習が始まるまでは、(今日の結果に)浸って、そうしたらもう過去のことなので。また、しっかりやっていきたいなと思います」
やはり徳元は着実にキャリアを積み上げてきた選手だ。あれだけ大きなインパクトを残した試合直後でも浮ついた様子は微塵もなし。その視線は、すでに次へと向けられていた。
取材◎佐藤 景